>  今週のトピックス >  No.1622
為替1ドル=100円を突破、世界同時不況も
●  12年ぶりの大台
  とうとう円相場が1ドル=100円の大台を突破した。実に12年ぶりのことだ。日本の景気が踊り場入りするなかでの円高で、日本円の評価が上がっているわけでない。いわば超ドル安の結果で大台突破となった。米経済への不信認を映すかのように、金融不安下で買われるべき米国債が売られ、長期金利がじわり上昇という不気味な動きも見える。マーケットでは世界同時不況というシナリオもささやかれ始めた。
  新年の「今週のトピックスNo.1574」で「すべての問題はサブプライムから発する」と書いた通り、円の大台突破もこの問題の一断面に過ぎない。米連邦準備制度理事会(FRB)が金融不安発の米景気後退を恐れ、強烈な利下げを行った結果、これまで高金利の恩恵を享受できたドル資産が売られドル安が進行した。筆者は新年の時点で今年の為替の予測レンジを「110円を中心に上下10円」としていたが、見事に下限レンジを突き破り95円台まで急伸した。
●  実体経済は新年予想より下ぶれ
  ちなみに長期金利は「1.5%を中心に上下0.2%程度」、日経平均株価は「1万5,000円台が目安」としていたが、3月末時点で長期金利が1.2%台後半、日経平均株価が1万2,000円台後半で推移しており、筆者の予想よりも実態経済はかなり下ぶれしている。
  問題は「今が底か」という点だが、そうは思えない。米国では大手証券会社が救済買収されるなど金融不安が続いており、FRBの利下げに打ち止め感はない。日米金利差が縮小すれば引き続きドル安円高圧力がかかる。円高は輸出中心の日本企業の収益を圧迫する。ドル安は「今週のトピックスNo.1590」で書いたように金や原油など商品の価格を押し上げ、この原燃料高も企業の収益を圧迫する要因だ。
  これまで日本の景気を下支えしてきた企業セクターが不調に転じると景気後退懸念が生じるし、何より株価を下押しする。するとこれまで以上に安全資産の債券が買われ、長期金利は低下するというシナリオも頭をもたげる。金利が下がりすぎると債券運用が中心の生命保険会社や年金基金の運用環境が悪化する恐れが出てくる。
●  日経平均株価1万円割れも?
  こう考えていくと、年内に円相場は1ドル=80円台、日経平均株価の1万円割れ、長期金利の1%割れという日本経済にとって悪夢のような展開も想定できる。その兆候といえそうなのが、低下傾向にあった米長期金利の上昇(債券価格の下落)だ。米国が破たんしない限り元本がき損しない、究極の安全資産ともいうべき米国債がこの期に及んで売られるということは、現在進行中の金融不安の終わりは見えておらず、世界同時不況が意外と間近に迫っていることを示しているかもしれない。
2008.04.07
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