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労働基準法上の管理監督者とは
●  名ばかり管理職について社会的関心が高まる
  厚生労働省は4月1日、管理監督者(いわゆる「管理職」)の範囲の適正化について、適切な監督指導を行うよう都道府県労働局長あてに通達した。最近話題になっている名ばかり管理職に関する報道や電話相談の増加などがきっかけと思われるが、現場の経営者側にとっては厳しい指導となることが予測される。
  実際に現場をのぞいてみると、十分な権限や相応の待遇を与えられていないにもかかわらず、労働基準法の管理監督者とみなされている著しく不適切なケースもあり、早急に指導が必要な企業も見受けられる。名ばかり管理職については、テレビで特集が組まれて放映されたこともあり、ますます社会的な関心が高まってきているのは確かである。
  管理職の名が付けばすべて労働基準法上の管理監督者になるわけではないということをきちんと理解するために今回は、労働基準法上の管理監督者の定義について基本的なポイントをまとめておきたいと思う。
●  管理監督者の定義
  そもそも労働基準法上の管理監督者とはどのように定められているのだろうか。労働基準法第41条第2号では、「監督若しくは管理の地位にあるもの(いわゆる「管理監督者」)」について、労働時間、休憩および休日に関する規定の適用の除外を認めており、それゆえに管理監督者であれば労働基準法上の時間外割増・休日割増賃金の支払いは不要とされている。しかし、「部長」や「課長」の役職だけを基準にして割増賃金を支払わなくても良いということにはならない。各企業が考えているいわゆる「管理職」と労働基準法の管理監督者の範囲は、まったく別モノである。今回の名ばかり管理職の問題が起きているのは、企業側の誤った解釈によるものといえる。
  行政解釈では、管理監督者とは「一般的には部長、工場長等、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものである」としている。具体的には、次の3つの要件すべてを満たしている必要がある。
  <管理監督者の3つの要件>
1 企業の人事労務管理方針の決定に参画し、経営者と一体的立場にあること
2 自己の勤務について自由裁量の権限を持っていること
3 管理監督的地位に対して管理職手当など特別な給与が支給されていること
●  早急に管理職制度の見直しが必要
  各労働基準監督署の指導は、今回の通達を受けてより厳しくなるものといえるだろう。既に、大手ファーストフード企業の判決を受けて、店長を管理監督者から外し、時間外手当を支給するような大手企業も見受けられる。管理職の範囲の見直しは、今後も進んでいくものと思われるが、残業代の視点だけでなく、長時間労働を抑え健康障害を予防するという視点でも考える必要がある。
  自分の会社には、先ほどあげた3つの要件を満たさない管理職がいると6割以上の企業が答えているという調査結果もあがっており、問題は思った以上に深刻である。
  これまで管理職の定義はあいまいなまま広く解釈されて運用されてきており、労働基準監督署側も厳しい取り締まりをしてこなかったことは事実である。しかしながら、これまでも管理職であるかどうかを争う裁判例は多数あり、労働者側が勝訴しているケースが多いことを考えれば、各企業が早急に管理職について見直し等をしなければならないことはあきらかといえるだろう。
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2008.04.14
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