>  今週のトピックス >  No.1628
使用していない固定資産に有姿除却を活用しよう
●  固定資産台帳は隈なくチェック!
  中小企業など決算期近くになると顧問税理士から減価償却明細書を渡されることがある。このとき、新規取得資産と当期の減価償却費合計額についてはチェックが漏れることはないだろうが、減価償却明細書に記載されている資産が存在するか、または使用する見込みがあるかどうかについてもぜひ確認していただきたい。
  というのは、顧問税理士は帳面上の資産だけで判断することが多く、実際に存在しているかどうかまでは通常は知らないので、顧問先から存在の有無を通知しないと前期のままとなっていることがあるからだ。既に廃棄処分となっている資産が帳面上に載っていることもあるので、必ずチェックすべきだ。
  なお、会社の帳面上すでに除却や廃棄してしまった資産がある場合には、その未償却簿価はその期の費用とすることができる。
●  固定資産除却損
  法人が固定資産を除却処理するには、原則としてその資産を解撤、破砕、廃棄等しなければならない。その上で、固定資産の帳簿価額からその処分見込価額を差し引いた金額を除却損として経費計上することができる。
  しかし、大型な機械装置を廃棄等するのは多額の費用がかかるので、使用を中止後工場で放置したままとなっていることもあるだろう。そこで、実際に取壊したり廃棄をしていなくても、この現状の姿のまま除却する「有姿除却」という制度があるので説明しよう。
●  有姿除却とは…
  税法では、下記に掲げるような固定資産については、たとえその資産につき解撤、破砕、廃棄等をしていない場合であっても、その資産の帳簿価額からその処分見込価額を控除した金額を除却損として損金の額に算入することができる。
  (1)その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産
  (2)特定の製品の生産のために専用されていた金型等で、その製品の生産を中止したことにより将来使用される可能性のほとんどないことがその後の状況等からみて明らかなもの
●  有姿除却のポイント
  有姿除却は、資金の支出を伴わない経費であり節税の観点から有効ではあるが、恣意性の排除を証明する証拠が後の税務調査対策の上で重要となろう。ポイントは、その資産が将来使用される可能性がないということを立証できるかどうかだ。
  例えば、製品の専用金型等については、生産が中止となったからすぐに有姿除却できると考えるのではなく、生産中止後の状況を見極め、将来の使用可能性を慎重に判断したうえで現状の姿のまま(有姿)除却できるかどうかの判断を行うということになるだろう。
  そして、税務調査があった場合には課税当局は実物を見ると推測するが、外見では将来再利用する可能性があるかどうかは判断が難しいので、書類等を残すことをお勧めする。
●  具体例
  具体的に有姿除却する場合には、その資産を有姿除却するに至った経緯・理由を具体的に記載した稟議書・役員会の議事録、その資産の運用担当者の配置転換等があった事実がわかるものを残すという方法等がある。
(今村 京子 マネーコンシェルジュ税理士法人)
2008.04.21
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