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税理士に一定業務を委託した場合、「本人確認」されることがある?!
●  3月に「犯罪収益移転防止法」が全面的施行
  あなたが、税理士に一定業務を委託したときに、税理士からあなたの「本人確認」を求められることがあるようだ。
  これは、先月3月1日から「犯罪収益移転防止法」が全面的に施行されたことにより、税理士(税理士法人を含む)には、顧客と一定の取引を行う際、顧客の本人確認や本人確認記録の作成・保存、取引記録の作成・保存の義務が課せられたからだ。
  犯罪収益移転防止法とは、犯罪による収益の移転(マネー・ロンダリング)防止を図ることやテロ行為などへの資金の供与防止を確保するためのもの。同法においては、金融機関やクレジットカード業者をはじめ、弁護士、税理士、公認会計士、司法書士、行政書士など12事業者に顧客の本人確認等が義務づけられている。
●  特定業務は顧客の代理で行う宅地・建物の売買など3項目に限定
  税理士の場合、法律が適用される特定業務は、顧客のために行う、(1)宅地または建物の売買に関する行為または手続き、(2)会社の設立または合併等に関する行為または手続き、(3)現金・預金・有価証券その他の財産の管理・処分、のいずれかの行為の代理または代行に限定されている。例えば、顧客を代理して不動産の売買を行ったり、顧客の相続財産を管理する業務などが該当する。
  特定受任行為の代理等から除外される業務は、(1)租税の納付手続きの代理・代行、(2)成年後見人の業務、(3)財産の価額が200万円以下の財産の管理・処分である。また、相談のみを行うなど、顧客の代理または代行でない業務や、会計参与、取締役、監査役等の会社の機関として行う業務は、基本的に、特定受任行為の代理等に該当しない。
●  本人確認記録および取引記録は7年間の保存義務
  税理士は、顧客との間で、上記の特定受任行為の代理等を行う契約を結んだときには、顧客の本人確認を行うことが求められる。
  顧客が個人の場合は、運転免許証や健康保険証、パスポートなどの公的証明書の提示を受けて、顧客の氏名・住所・生年月日を確認する。また、顧客が法人の場合は、登記事項証明書や印鑑登録証明書などの提示を受けて、法人の名称、本店または主たる事務所の確認を行うとともに、取引担当者についても氏名・住居・生年月日を確認する必要がある。
  税理士は、本人確認を行った場合にはその記録を作成しなければならない。主な記録事項は、本人確認を行った者および本人確認記録作成者の氏名等、本人確認書類の提示を受けた日付、本人確認を行った取引の種類、本人確認を行った方法、顧客の本人特定事項などだ。
  さらに、特定受任行為の代理等を行ったときには、その記録を作成しなければならず、これらの本人確認記録および取引記録は、文書やコンピュータのワード文書などで作成して、7年間保存しなければならないとされている。
  なお、犯罪収益移転防止法の対象となる特定事業者は、特定業務において収受した財産が犯罪による収益である疑いなどがあると認められる場合には、政令で定める事項を行政庁に届け出なければならないが、税理士については、その適用が除外されている。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2008.04.21
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