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改正法案未成立で期限切れとなった租税特別措置の取扱い〜不利益規定は公布日以降適用と明言〜加藤主税局長
●  原則として法律は4月1日に遡って適用
  2008年度税制改正法案は年度末の3月31日に成立せず、期限切れとなった租税特別措置の取扱いが気になるところだ。期限切れとなると国民生活が混乱する怖れがある租税特別措置7項目および自動車取得税の免税措置等の期限は、“つなぎ法”によって5月末まで2カ月延長されたが、それ以外に実務的に影響が大きいものも少なくない。例えば、研究開発促進税制や交際費等の損金不算入制度などが期限切れとなっている。
  こうした期限切れとなっている租税特別措置の取扱いについて、財務省の加藤治彦主税局長は4月15日の参院財政金融委員会において、民主党の水戸将史議員の質問に答え、税制改正法案が施行日である4月1日を過ぎて成立した場合は、「原則として法律は遡って適用されると考えている。ただし、不利益不遡及の原則があるので不利益な規定は、公布日以降に適用される」と明言した。
●  納税義務の発生時点がいつかで判断
  また、加藤局長は、ガソリン税などの暫定税率が復活した場合について、「揮発油税は蔵出し税なので製造場からの移出段階で納税義務が発生する。その発生日がたとえ4月1日以後であっても、法律の成立がそれよりも遅れている場合は、その間はもはや遡及できない。納税義務がすでに確定しているので増税になるような規定は適用できない。あくまでも納税義務の発生時点がいつかということで判断していく」と答弁している。
  そうなると、遡及すると増税となるが、交際費の損金不算入制度は「開始する各事業年度」ベースで適用するものなので、従来の措置法で会計処理できる。つまり、実際の申告は、その申告に係る事業年度終了時の法令の規定に基づいて行うことになる。3月決算法人であれば、2008年4月1日に開始する事業年度の申告は、2009年3月31日における法律が適用されることになるので注意したい。
  ただし、「終了する各事業年度」ベースで適用する欠損金の繰戻しによる還付の不適用や、支出ベースで適用する使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例などは、遡及できないことになる。加藤局長は、法案が成立したら各措置の具体的な適用関係を明確化するとしている。
●  遡及・不遡及は改正法案成立後、政令で明確化
  2008年度税制改正法案に関しては、4月30日以降に衆議院で再議決によって成立するとみられているが、租税特別措置のうち4月1日に遡及できるものと公布日以降に適用になるものとの振り分けは政令によって行われることになる。
  これは、2008年度税制改正法案はすでに衆議院で可決されているため修正が行えないからだ。3月31日で改正法案が未成立のため、国民生活等に影響するものは“つなぎ法”として2カ月延長されたが、この期限延長法の附則に経過措置が設けられており、税制改正法案の公布日以降の適用関係については政令で定めることとされた。
  したがって、この政令によって、不利益不遡及の原則によって4月1日に遡及適用ができない期限切れのものについての適用関係が明らかになるものと思われる。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2008.04.28
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