>  今週のトピックス >  No.1637
3社に1社が初任給を引き上げ
●  初任給を据え置いた企業は66.8%
  民間調査機関の財団法人労務行政研究所は,今年4月入社者の決定初任給を調査し、4月7日までにデータの得られた東証第1部上場企業214社について速報集計をまとめ、発表した。
  新卒採用競争が過熱化する売り手市場下で優秀な人材を獲得するためには、初任給の水準も重要な要素となり、その動向には各企業とも注目している。新卒が企業を選ぶ際に、初任給そのものはそれほど重視していないと思われるが、採用する側にとっては、世間相場や社会の流れなどを無視することもできず、決定に際してはさまざまな苦労があるものと予想される。
  肝心の調査結果であるが、2008年度に初任給を据え置いた企業は66.8%であった。一方、引き上げた企業は32.7%で3社に1社となった。初任給据え置き率が低下していく中で、企業側も在籍者とのバランスを考えて今後どのように初任給を決定していくのか見守っていきたい。
●  パート・アルバイトの積極的な活用には程遠い現状
  初任給を据え置いた企業は66.8%であったが、この数字をどのように捉えるかは、人それぞれで異なるところである。過去の実績を見てみると初任給の据え置き率は2002年度以降4年連続で9割を超えたが、2006年度8割、2007年度7割と減少し、2008年度もやや下降傾向にある。
  初任給の据え置き率が低下したということは、初任給が上がっている企業が多いということ(一部初任給を下げた企業もある)であるが、企業側にとっては悩みもある。初任給を上げるには、在籍者とのバランスを考えなければならないし、在籍者の昇給などにも影響することになる。
  企業業績の回復や団塊世代の大量退職などを背景に、企業の新卒採用意欲は急速に高まり、人材獲得競争は過熱化していることが、初任給据え置き率の低下に大きく影響しているが、需給関係によるものと考えれば当然の結果ともいえるだろう。
●  大学卒の初任給平均は、20万4,333円
  初任給は,大学卒で20万4,333円,高校卒で16万2,241円の水準。同一企業でみた昨年度に比べ,それぞれ1,500円(0.7%)、897円(0.6%)の上昇である。発表になっているグラフをみていくと大学卒の中には、最高引き上げ額が31,000円という企業もあったことは、注目すべき点である。企業側も差別化のために初任給を大胆に引き上げるというのも人材獲得競争に勝つための方法の1つと考えているのかもしれない。今回のような調査は、新規学卒者の初任給の実態と動向を把握し、今後の初任給対策の参考とするためにも絶対に欠かせないものであり、来年これらの結果を受けてどのように各企業が初任給を決定していくのかは、大変興味深いところである。
出所:財団法人労務行政研究所 「2008年度 新入社員の初任給調査」
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2008.05.12
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