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減価償却制度の法定耐用年数を抜本的に見直し
●  機械・装置の資産区分を390区分から55区分に簡素化
  減価償却制度は昨年、約40年ぶりに抜本改正されたが、耐用年数については、ほとんど見直されず、使用実態を調査した上で、2008年に見直すこととされていた。2008年度税制改正では、 (1)法定耐用年数区分について、別表第二(機械及び装置)の資産区分を、日本標準産業分類の中分類単位に55区分に大括り化するとともに、使用実態等を踏まえて耐用年数を見直し、(2)短縮特例制度の手続き簡素化が行われた。
  改正前の法定耐用年数(別表第二)は、機械や装置の種類ごとに390区分に細分化されており、新技術や新製品が誕生するごとに適用する耐用年数等の問題が生じ得るとの指摘があった。また、アメリカ(業種ごとに48区分)やイギリス(償却率25%のみの1区分)、韓国(業種ごとに26区分)などに比べ複雑なことから、経済団体を中心に、国際競争力強化の観点からもその見直しを求める声が強かったものだ。
  見直し後の耐用年数は、使用実態調査の結果得られた耐用年数区分ごとの平均使用年数と一資産あたりの平均取得価額を使用し、加重平均の方法により算出されている。ただし、実使用年数が短いことなどから、新たな耐用年数をそのまま適用することが適当でない設備については、その中分類のなかで細目として特例枠を設け、新区分で定めた年数よりも短い期間で償却できるように配慮されている。
●  既存の減価償却資産についても適用
  法定耐用年数の見直しは、2008年4月1日以後に開始する事業年度について適用されるが、既存の減価償却資産についても適用されるので、実務的にも少なからぬ影響が出てくる。つまり、既存の減価償却資産についても、償却率をすべて変更しなければならないという事務負担がある。改正の主な対象が機械装置であるため、大規模な工場ではかなりの事務負担が発生することが予想されている。
  ただし、法定耐用年数が短縮される場合には、従来の長い耐用年数を適用したままでも償却限度超過額は発生しないため、事務負担とのバランスを考えた上で、従来の耐用年数を使用するという選択肢も考えられる。
  また、次期以降の予算については、新しい法定耐用年数を基に作成する必要がある。ともあれ、別表第二が55区分に簡素化されたことで、新規に機械装置を取得する事業者の事務負担が軽減されることが期待できる。
●  納税者の事務負担に配慮した短縮特例手続きの簡素化
  減価償却制度においては、一定の事由によって、使用可能期間が法定耐用年数に比べておおむね10%以上短くなった場合には、耐用年数の短縮の承認申請ができる特例がある。この耐用年数の短縮特例について、一度、特例が承認された減価償却資産について軽微な変更があった場合や、特例が承認された減価償却資産と同一の他の減価償却資産を取得した場合などは、改めて承認申請をすることなく、変更点等の届出だけで適用できるようになった。
  この改正の背景には、短縮特例の承認申請には、審査には2〜3カ月かかるなど時間と手間がかかることがある。そこで、納税者の事務負担に配慮し、一度、短縮が承認された資産と同じような資産の場合は、審査を必要とせずに、変更点等の届出だけで短縮特例が適用できるように改正されたわけだ。今後、届出だけで済めば事務負担はかなり軽減されることになり、審査時間もかからず、証明書類も必要ないので、迅速な適用が可能となる。

法定耐用年数区分の見直し <主要業種における見直しの例>
主要業種 改正前区分
(旧耐用年数)
改正後区分
(新耐用年数)
主要設備(例)
輸送用機械器具
製造業
15区分
(7〜13年)
1区分(9年) ・自動車製造設備(改正前10年→9年)
・航空機製造設備(改正前10年→9年)
電子部品・デバイス・
電子回路製造業
5区分
(6〜12年)
1区分(8年)
※細目あり
・電気通信用機器製造設備
  (改正前10年→6年)
・半導体デバイス製造設備
  (改正前5・7年→5年)
鉄鉱業 12区分
(11〜15年)
1区分(14年)
※細目あり
・製鉄設備(改正前14年→14年)
・鉄鋼圧延設備(改正前14年→14年)
・表面処理鋼材製造設備等
  (改正前5年→5年)
化学工業 93区分
(3〜13年)
1区分(8年)
※細目あり
・エチレン製造設備(改正前9年→8年)
・半導体フォトレジスト製造設備
  (改正前5年→5年)
石油製品・石炭製品製造業 8区分
(7〜14年)
1区分(7年) ・石油精製設備(改正前6年→7年)
生産用機械器具製造業 9区分
(10〜13年)
1区分(12年)
※細目あり
・金属加工機械製造設備
  (改正前10年→9年)
※なお、電気業、ガス業については、改正前区分、改正前耐用年数を維持
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2008.05.19
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