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研究開発促進税制の抜本拡充〜法人税額の最大30%まで控除
●  「総額型」に加えて「増加型」と「高水準型」を選択適用
  研究開発投資促進税制については、2008年度税制改正において、従来の試験研究費の増加分に対する税額控除率の上乗せ措置を改組し、恒久措置である「総額型」に加え、「増額型」と「高水準型」のいずれかを加算できる制度となった。また、税額控除上限が法人税額の最大30%(改正前20%)まで拡充された。同制度は、2008年4月1日から2010年3月31日までの間に開始する事業年度について適用される。
  今回の改正では、研究開発費を増加させる企業や研究開発比率の高い企業を優遇し、恒久措置の総額型と別枠で、 (1)試験研究費の増加額の5%を税額控除、(2)売上高の10%を超える試験研究費に係る税額控除(高水準型)のどちらかを選択適用できることになった。高水準型は、「(試験研究費−売上高×10%)×税額控除割合」を税額控除する。税額控除割合は、「(試験研究費割合−10%)×0.2」で計算する。
  恒久措置の総額型は、試験研究費総額の8%〜10%(中小企業は12%)を法人税額の20%を上限に税額控除する。総額型と別枠で選択適用できる2つの措置の税額控除上限は、ともに法人税額の10%。この結果、税額控除上限は、合計で法人税額の最大30%まで拡充される。
●  見込まれる研究投資の拡大は3年間累計で約2.3兆円
  民間研究開発投資額は、米国には遠く及ばず、中国の猛追を受けている状況だが、同税制の抜本拡充によりわが国民間研究開発のさらなる加速が期待される。
  経済産業省では、研究開発促進税制の拡充による減収額は3年間(2008〜2010年)の累計で約1.9兆円だが、同税制の拡充により押し上げられる研究開発投資は、減収額の約1.2倍の約2.3兆円と推計され、10年間累計では約9.1兆円(減収額の約4.8倍)の実質GDP押上げ効果が見込まれるとの試算を示している。また、税収弾性値を用いた推計では、3年分の減収額が6年で回収されるとみている。
●  中小企業に見込まれる二重の効果
  研究開発促進税制の抜本拡充は、中小企業に二重の効果があるとみられている。総務省の「科学技術研究調査報告」によると、大企業から中小企業など社外への委託研究が急増している。大企業の研究費は2000年度の10.8兆円から2005年度は12.5兆円へと5年間で1.7兆円増加しているが、うち社外支出分は同1.2兆円から1.8兆円へと0.6兆円増加しており、大企業の研究費の増加分の3分の1は社外支出分となっている。
  一方、中小企業は、他の企業からの受託研究費が2000年度の270億円から2005年度は1,312億円へと、5年間で5倍増と急増している。また、中小企業は、自らも多くの研究費を投じ、独創的かつ高度な技術を開発していることはいうまでもない。
  こうしたことから、研究開発促進税制の抜本拡充は、独自の研究開発に対する税制支援としての直接効果と、大企業からの受託研究費等の増加への間接効果という二重の効果が見込まれることになる。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2008.05.26
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