>  今週のトピックス >  No.1647
過労、精神障害での労災の状況
●  過労での労災認定は過去最悪
  2007年度における過労や精神疾患による労災認定の状況が、厚生労働省から報告された。
  これによると、過労を原因とする労災認定は392人と、2006年度の355人を上回り過去最悪となった。同省では、脳血管疾患・虚血性心疾患等を原因とする労災認定を過労によるものと区分しており、その数はここ4年間増加を続けている。そのうち過労死に至った人数は142人で前年度の147人から微減にとどまり、過労死についても高止まりの状況となっており、一向に改善の気配は見られない。
●  過労労災は50歳代が最も多い
  労災認定数を業種別にみると、全体392人のうち運輸業が101人と最も多く、4分の1を占めている。そのほかには製造業、建設業、卸・小売業がそれぞれ50人以上の認定がある。年代別に見ると50歳代が163人で全体の42%、40歳代が115人と29%を占めており、この2つの年代で全体の7割を占めている。そのほかは30歳代54人、60歳以上44人となっている。
  また長時間勤務による過重労働が原因であると認定されたのは392件中362件であり、その1カ月間の時間外労働時間数は、80時間以上100時間未満が最も多く135人、100〜120時間は91人とこれだけで全体の半数以上となる。逆に80時間未満で労災認定されたケースは少なく28人にとどまる。
●  精神障害の労災は2年で倍増
  うつなどの精神障害で労災認定された人数は、268人と2006年度の205人から大幅に増えた。過去最悪の人数である。2005年度は127人であったことから、2年で倍増していることになる。うち自殺者は81人で前年度の66人からも増えている。先述の過労死は高止まりの傾向にあるのに対して、精神障害は急増の一途である。
  業種別に見ると、全体268人中、多いのが製造業で59人、卸・小売業で41人となっている。
  職種別にみると、最も多いのが医師やエンジニアなどの専門的・技術的職業従事者で75人である。そのほかには生産工程・労務作業者が60人、事務従事者が53人となっている。年代別に見ると30歳代が100人で全体の37%、20歳代の66人、40歳代が61人となっている。過労死が50歳代中心であったのに対して年齢は若い。1カ月の時間外労働時間では100時間〜120時間が最も多いものの、20時間未満なども多くあり、必ずしも長時間労働には限られない。いじめなども原因もあると思われる。
出所:厚生労働省「平成19年度 脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況について」
(可児 俊信 (株)ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所、千葉商科大学会計大学院教授、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2008.06.02
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