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原油価格高騰続く、適正水準は1バレル90−100ドル?
  原油価格の高騰が止まらない。5月下旬には1バレル130ドル台後半に突入し、市場では150−200ドルまで高騰するという予想も出るほどだ。なぜ、これほどまで原油価格は高騰したのか?原油高は今後も続くのか? Q&A形式でわかりやすくまとめてみた。
Q  なぜ原油の価格が急激に上昇しているのか?
A   モノの値段は「需要」と「供給」のバランスによって決まる。1970年代に起きた石油ショックは中東産油国の政情不安という供給側の問題が原油価格の高騰を引き起こした。これに対して今回は中国、インドなど新興国の成長とそれに伴う原材料不足という需要側の問題が主な原因だ。
  この傾向をさらに助長しているのが「投機」と「投資」という2つの性格のマネーだ。投機はヘッジファンドなど短期的な売買で利ざやを狙う投資家の資金、投資は年金基金や生命保険会社など長期的な売買で利益を狙う投資家の資金と区別できる。欧米の年金基金などは一昨年ごろから、分散投資の一環として株や債券だけでなく原油や金属など商品市場への投資を始めている。こうした動きに先んじる、または便乗する形で投機マネーが商品市場に流入し、価格の乱高下が起こっている。
Q  投機・投資マネーは原油価格をどの程度押し上げているのか?
A   経済産業省のまとめによると原油価格が1バレル100ドルに迫った07年後半の傾向は「需給要因」で50−60ドル、「投機マネーや政情不安要因」が30−40ドルとしている。原油価格は原稿を執筆している5月下旬時点で130ドル台だが、筆者の感覚として実需で70−80ドル、投資・投機で50−60ドル程度ではないかと考えている。
Q  原油高は続くのか?
A   世界的な金融不安と、原材料高を契機としたインフレで新興国の成長が鈍化することを考慮しても、実需要因で60−70ドルの状況は続く可能性が高い。投資と投機の割合が半々として、長期マネーはそう簡単に資金を動かすことができないため、30ドル前後の価格押し上げ要因は残る。合計して90−100ドル前後の水準が、現在の原油価格の「あるべき姿」と推計でき、この水準から大きく下げるとは考えにくい。ただ、現状の130ドル台というのは明らかに短期で資金を動かす投機マネーの影響で、相場がひとたび悲観に傾けば、90−100ドル台に戻るのは速いかもしれない。
2008.06.02
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