>  今週のトピックス >  No.1651
企業の育児支援の状況
●  4社に1社は法定超の育児休業制度を実施
  企業における育児支援対策が盛んであるが、このたび厚生労働省では、企業の取り組みの現状を調査(平成19年11月実施)し、結果を報告した。この調査では企業側と従業員側に同時に調査し、企業の取り組みが従業員にどのように受け入れられているかを知ることができる。
  まず育児休業制度において育児休業法を上回る規定を定めているかを尋ねている。同法で定める育児休業を取得できる子どもの年齢は1歳(要件を満たせば1歳半)未満であるが、それを超える年齢を設定している企業は11.0%である。また法律上は子一人につき1回まで取得できるが、複数回の取得を認めているという企業は8.4%である。さらに休業期間中に休業者に何らかの金銭支給を行っている企業は11.7%である(法律上の定めはない)。こうした同法を上回る何らかの規定を持つ企業は、全体の24.6%と4社に1社にのぼる。さらに300人以上の企業に限れば32.0%、1,000人以上の企業では55.2%と、2社に1社は同法を上回る規定を定めていることになる。
●  育児短時間勤務は6割の企業で導入
  同じく同法では育児短時間勤務を与えなければならないと定めているが、それを導入済みであるかを尋ねると、制度(規定)としてある企業は51.1%、制度はないが運用で実現しているのは8.5%、合計して59.6%が導入済みである。これも300人以上の企業に限れば79.0%、1,000人以上の企業では86.5%と、大部分の企業で育児短時間勤務を導入していることになる。
  逆に企業規模が小さくなるほど、未導入企業が多くなるが、未導入企業にその理由を尋ねている。その理由として多いものは、「制度の対象となる育児中の従業員が少ない」(58.8%)、「短時間勤務になじまない業務が多い」(28.4%)、「短時間勤務のニーズがない」(20.9%)、「他の従業員の負担が増える」(17.9%)などとなっている(複数回答)。
●  高い従業員の育児支援ニーズ
  この調査では、このように回答した企業に勤務している従業員に対して、その理由の妥当性を尋ねて検証している。「制度の対象となる育児中の従業員が少ない」と答えた企業の従業員は、その理由を「あてはまる」とするのが62%いるが、「あてはまらない」とするのも38%ある。「短時間勤務のニーズがない」とする理由を「あてはまる」とするのが26%に過ぎず、「あてはまらない」とするのが74%に及ぶ。企業の認識と従業員の意識・ニーズがまったく一致していない。
  さらに従業員に対してこうした制度を利用したいかを尋ねると、女性従業員は、「育児休業制度を利用したい」とするのが68.9%、「育児短時間勤務制度を利用したい」は62.3%と、多くの従業員がこうした育児支援制度を活用しながら、働き続けたいと考えていることがわかる。
出所:厚生労働省「今後の仕事と家庭の両立支援に関する調査結果」(平成20年5月発表)
(可児 俊信 (株)ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所、千葉商科大学会計大学院教授、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2008.06.09
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