>  今週のトピックス >  No.1655
出生率の最新状況
●  合計特殊出生率は2年連続して上昇
  このたび、厚生労働省から2007年における人口動態が発表された。ここで注目されるのは、出生率の動向である。
  合計特殊出生率は2年連続して上昇しており、2007年では1.34となった。これは直近7年間で最も高い値である。合計特殊出生率を都道府県別に見ると、人口の多い都市部で低いため、全体の出生率を引き下げている。例えば東京は全国で最も低く、1.05、千葉1.25、神奈川1.25、埼玉1.26、京都1.18、大阪1.24などとなっている。一方、地方では沖縄1.75、鹿児島1.54、宮崎1.59、福島1.49などである(なお北海道は1.19と低い)。
  2007年では、東京が0.03、埼玉で0.02、神奈川で0.02、京都で-0.01、大阪で0.02など都市部において回復しているのが目立つ。都市部で働く既婚女性にとって子どもを育てやすい環境が少しずつ整っているということだろうか。
●  晩婚化傾向は続く
  出産する年齢階級は、かつては20歳代後半が最も出生率が高く、合計特殊出生率に貢献していたが、2005年からは30歳代前半が最も高くなっており、晩産化が進んでいることがわかる。
  これは第1子を生んだ際の母親の年齢が年々高くなっていることからもわかる。例えば1985年では26.7歳だったが、いまや29.4歳である。
  こうした晩産化は、晩婚化が大きな原因と言える。女性の初婚年齢は2007年では28.3歳である。15年前の1992年では26.0歳だったが急速に初婚年齢が引きあがっている。特に都市部で初婚年齢が高く、東京で29.5歳、神奈川29.0歳、埼玉28.5歳、千葉28.6歳、京都28.6歳、大阪28.5歳となっている。
●  出生数が減少傾向
  婚姻数も毎年減少している。戦後で最も婚姻数が多かったのが1972年で109万組だった。2007年では71万組まで減少しており、晩婚・晩産だけでなく出生率の分母とも言える既婚女性数が減少していることが、長期的な出生率の低下の背景にあることがわかる。
  合計特殊出生率はやや持ち直しているものの、絶対数としての出生数は2007年で108万人であり、前年より3千人弱減少している。これは2000年から一貫して減少傾向にある(2006年は除く)。
  企業内で進むワーク・ライフバランスの取り組みや政府がすすめる少子化対策などによって、都市部で出生率の持ち直し傾向が見られる。しかし、晩婚化が晩産化をもたらし、子どもを生み育てる期間は短くなっており、夫婦が持つ子どもの数を増やすことは難しい。今後は若くして結婚・出産できる社会環境を整えていくことが重要ではないか。
出所:厚生労働省「平成19年人口動態統計月報年報の概況(平成20年6月発表)
(可児 俊信 (株)ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所、千葉商科大学会計大学院教授、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2008.06.16
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