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上場株式等の軽減税率特例と譲渡・配当の損益通算
●  株式譲渡益500万円以下は10%軽減税率2年延長
  2008年度税制改正で焦点となっていた株式譲渡益と配当に対する軽減税率については、ともに2008年12月31日をもって10%軽減税率を廃止した上で、2009年1月から2011年12月までの2年間は、上場株式等の譲渡益は年間500万円以下の部分に限って市場特例措置として、また、上場株式等の配当は年間100万円以下の部分に限って少額配当の軽減措置として、ともに10%の軽減税率を適用する。
  2009年1月から2年間の源泉徴収口座における源泉徴収税率(特別徴収税率)は10%の軽減税率とされ、年間の上場株式等の譲渡益の合計額が500万円以下の場合は確定申告が不要とされる。この場合、源泉徴収口座の上場株式等に係る譲渡益と源泉徴収口座以外の上場株式等に係る譲渡益の合計が500万円を超える場合は、その超える年分について源泉徴収口座の譲渡所得等に係る申告不要の特例は適用されない。
●  配当所得は分離課税も選択可能
  上場株式等の配当等についても、その年中の10%源泉徴収の対象となった金額の合計額が100万円以下の場合は申告不要制度の適用が受けられる。1年間に受け取る上場株式等の配当金等の合計額が100万円を超える場合は、100万円超の部分は税率20%が適用され、確定申告が必要となる。100万円を超えるかどうかの判定は、100万円基準の算定対象外となる年間配当1万円以下の銘柄に係るものを除いて判定する。
  また、2009年1月以後に支払いを受ける上場株式等に係る配当所得については、20%の税率による申告分離課税を選択できる。年間配当100万円以下の場合は申告不要だが、総合課税によって配当控除を受けたほうが有利なときは、総合課税を選択できるわけだ。以上、当面2年間は税率が2段階となったことなどから、投資家のなかには申告が必要なケースも出てくるので、事務負担が増す可能性もある。
●  申告分離課税選択の配当に限られる損益通算
  ほかでは上場株式等の譲渡損失と上場株式等の配当所得との間の損益通算の特例が創設されたことも注目される。この改正は、2009年分以後の所得税および2010年度分以後の住民税から適用される。
  同特例は、その年分の上場株式等の譲渡所得等の金額の計算上生じた損失があるとき、またはその年の前年以前3年以内に生じた上場株式等の譲渡損失の金額があるときは、これらの損失を上場株式等の配当所得の金額から控除できるというもの。損益通算では限度額は設けない。ただし、配当所得は申告分離課税を選択したものに限られるので、損益通算する場合は、申告分離課税を選択しておく必要がある。
●  特定口座内での損益通算は2010年1月からの予定
  また、2009年分について損益通算の特例を適用するときは、取引内容を計算した上で確定申告しなければならない。2010年分以降は、源泉徴収選択口座に上場株式等の配当を受け入れると、その口座で行った上場株式等の譲渡損失と損益通算した上で源泉徴収され、確定申告不要制度の適用が受けられる。証券会社のシステム開発などの準備が整った段階で、早ければ2010年1月から適用が受けられる予定だ。
  このように、2009年からは、個人投資家が株式投資で損失を出したときは、配当所得から差し引いて所得税の額を減らすことができるようになるが、当面は申告が必要になること、損益通算の対象となる配当所得は申告分離課税を選択したものに限られることに留意しておきたい。なお、証券会社等は、2009年1月1日から特定口座の年間取引報告書を税務署に提出することが必要となる。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2008.06.16
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