>  今週のトピックス >  No.1659
企業の能力開発の状況
●  OFF-JTは8割が実施
  人口減少社会に突入するなかで、日本は働く個人の生産性を高めていくことが急務である。このたび、厚生労働省が企業における能力開発の実施状況(平成18年度中実施分)などを調査し、報告した。
  まずOFF-JTの実施状況については、平成18年度中に実施した企業は調査企業の77.2%と8割近い。これは正社員向けのOFF-JTの実施状況であり、非正社員に対しては40.9%と半数に満たない。それでも金融・保険業69.6%、医療・福祉69.3%と業種によっては高い。
  新入社員に対して入社1年以内にOFF-JTを行った企業の時間数は、1社あたり91.6時間である。これも企業規模による格差が顕著であり、500〜999名規模で164.0時間であるのに対し、1,000〜4,999名規模では321.3時間となっている。これは新入社員一人あたりの研修が充実しているというよりも、対象者数が多いために時間がかかっているのが実態であろう。
  OFF-JTの手段として、eラーニングを導入している企業は、回答企業の29.6%(正社員対象)、24.3%(非正社員対象)と3割近い。eラーニングにおいて正社員と非正社員の実施率の差が小さいのは、eラーニングのコスト体系が人数比例というより定額に近いため、受講対象者を増やしてもコスト増になりにくいためではないか。
●  自己啓発支援は金銭補助
  正社員の自発的な自己啓発に対する支援については、79.7%が行ったと回答している。支援内容は「受講料などの金銭的援助」73.1%、「教育訓練機関・通信教育等に関する情報提供」40.1%、「就業時間の配慮」38.7%、「社内の自発的な勉強会等の支援」37.5%などとなっている。非正社員向けの支援もほぼ同様の回答であるが、金銭的援助だけは46.9%と正社員に比べて低い。
  教育訓練休暇制度を導入しているのは、全体の9.3%とわずかである。これは有給休暇とした場合は、そのコストを会社が負担することに抵抗があり、無給とすると社員側の制度利用が進まないのが理由と言えよう。
●  能力開発コストは一人あたり年間3.1万円
  こうした能力開発にかける費用については、従業員一人あたりOFF-JTについては年間2.3万円、自己啓発支援費用は0.8万円と、合計で3.1万円となっている。OFF-JT費用の内訳は、研修の委託費や参加費、社外への人件費、社外への施設使用料が68.9%と最も多く、能力開発のアウトソーシングが進んでいることをうかがわせる。社内の人件費、社内の設備費・管理費、教材購入費は25.9%と内部での実施費用の割合は多くない。もちろん内部で行う場合は、コストが表面化しにくいためもある。
  能力開発コストは費用対効果の見えにくい費用であるが、企業の生産性向上のためには欠かせない費用であり、今後の充実が期待される。
出所:厚生労働省「平成19年度 能力開発基本調査結果概要」(平成20年6月発表)
(可児 俊信 (株)ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所、千葉商科大学会計大学院教授、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2008.06.23
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