>  今週のトピックス >  No.1661
企業の人材育成への取り組み、長期的雇用を前提に
●  10年前と比べ大幅に増加した会社主体の能力開発、人材育成
  財団法人 社会経済生産性本部の発表によると、「長期的雇用を前提に能力開発や人材育成を会社主体で行う」と答えた企業が7割を超え、97年の23.7%から大幅に増加したことが分かった。また女性社員の活用や管理職登用が業績に「効果がある」とする企業も7割を超えることが分かった。この発表は、財団法人 社会経済生産性本部が行った「日本的人事制度の変容に関する調査」による。この調査は、全上場企業を対象に97年より毎年行われており、今回の調査で11回目となる。10年前の調査と比べて、労働力不足や成果主義による人材の流出などを背景に、企業の意識が長期的な人材確保・育成、女性社員の積極的活用へ変わりつつあることが伺える。今回の調査では、ワークライフバランス施策や高齢者の再雇用状況なども対象としており、企業が取り組むべき課題に対する状況を知ることができる資料となっている。
●  若年社員の育成に対する企業意識の変化
  調査結果をみてみると、企業の雇用理念や人材育成の考え方に関し、「長期的雇用を前提に、能力開発や人材育成を会社主体に行う」という企業が76.7%と最も多くなっており、10年前と比較すると大きく変化している。97年時点では、能力開発を会社主体に行うという企業は23.7%と少なく、むしろ、能力開発などは社員の自己責任という企業が半数近くの49.0%と最も多かった。この結果は、長期的雇用を前提とし、若年層の能力開発を会社が主体的に行う方向へと、企業の意識が変わってきていることを表していると思われる。 このように、企業が能力開発や人材育成に力を入れる背景の1つには、若手社員の離職率の高さが挙げられるが、これに対する施策として、「若年社員に対する指導係をつけるなどのフォロー体制」が66.5%と最も多く、次いで、「初任給の引きあげなど、若年層の賃金水準の引きあげ」(56.1%)、「自己申告などにもとづく本人希望を尊重した異動・配置」(44.5%)、「人事部による定期的な面談などフォロー体制」(42.2%)などとなっている。若手社員層の定着を図るためには、初任給引きあげなど賃金処遇改善も必要ではあるが、それ以上に若手社員への指導や面談などのフォロー体制や本人の意思を尊重した異動・配置など、働く環境面での支援体制づくりに効果があると考えているようである。また、今後、新たに行う予定の施策については、「専門能力研修等若年層のニーズにあった研修プログラム整備」が54.3%で最も多くなっており、企業が新卒採用の人材を育成していこうという意向が強く見られる結果となっている。
●  人材不足に対する企業の体制作り
  企業が長期的人材育成や能力開発に力を入れ始めた背景には、労働力人口の減少による人材の採用難など会社の将来を担う優秀な人材の不足への懸念がある。人材不足への取り組みには、女性社員の活用も重要である。今回の調査でも「経営層からのトップダウンによる(女性活用・管理職登用に向けての)企業風土・意識改革の意思表明・明言化」をしているという企業は5割強(53.2%)を占め、女性管理職が増加した企業も4割強(43.5%)を占める結果となっている。実際、女性管理職が増加することで「会議の効率化など業務遂行の改善が進む」など企業に良い効果をもたらしている。
  これからの企業は、優秀な人材を確保するために、既存の枠にとらわれない人材の活用を考えていかなくてはならないだろう。
出所:財団法人 社会経済生産性本部「第11回 日本的人事制度の変容に関する調査結果」
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2008.06.23
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