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経営者なら知っておきたい税務調査の予備知識
●  7月以降は税務調査が活発化
  6/16に国税庁は平成19年度の査察(マルサ)の概要を発表した。外国為替証拠金取引(FX)の利益除外や、人材派遣業の外注費偽装による消費税脱税などが増加しているようである。
  これから夏以降になると、税務調査が多くなる。というのは、税務署の人事異動は通常7月であるため、人事異動後に調査が本格化する、というサイクルがあるからだ。今回は、税務調査について、経営者が一般的に知っておくべき項目をご紹介していきたい。
●  調査対象会社の選定
  まず、税務調査といっても、全ての個人事業者、法人を見て回るには物理的な限界があるため、あらかじめ税務調査を行う対象となる個人事業者、法人は税務署内で選別される。その詳しい選別方法は分からないが、おおまかには次の2つの方法が推測される。
  1つは、過去の決算推移から異常値がないかを確認する方法、もう1つは、統計的に脱税等の多い業種を重視する方法である。やはり税務調査の第一歩となるのは、前者の異常値の発見である。過去の決算から、原価率の推移や在庫の増減などを調べ、そこで異常値が発見されれば、税務調査に来る確率は高くなる。また、不動産業や人材派遣業など、統計的にみて脱税の多い業界も、調査対象の選定にあたっては重視されている可能性が高い。結果的には、だいたい3〜5年の周期で税務調査対象になる会社が多い。
●  調査の基本は、売上・仕入・在庫の3点セット
  実地調査になると、業種にもよるが、だいたい重点的に見られる項目は決まってくる。やはりどの業種でも、売上、仕入、在庫というこの3項目は、時間をかけて調査されることが多い。この3点は期末前後を中心にチェックされる。売上なら、期末に計上すべき売上が翌期に繰延されていないか、仕入なら翌期に計上すべき仕入が当期に前倒し計上されていないか、といった具合である。期末の仕入がきっちり在庫に計上されているかどうかも確認される。
  また、製造業であれば、製品、原材料だけではなく、仕掛品の計上も重要項目の1つになる。これは、いわゆる機械製造業などのような会社だけではなく、ソフトウェア開発業にも当てはまる。この場合、長期に渡って開発されているソフトで、期末現在完成してないものがあれば、そのソフト開発にかかった人件費は仕掛品として計上する必要があるためだ。
●  赤字の会社も要注意
  また税務調査では、赤字であっても油断はできない。消費税と源泉所得税は、赤字であっても、全く関係なく支払わなければならない税金である。冒頭でもご紹介した、人材派遣会社の外注費偽装による脱税は、何も人材派遣会社に限ったことではない。
  脱税の意図はないにしても、中小企業で個人に対して“外注費”を支払っているケースは多々ある。この場合、もしその“外注費”が“給与”として認定されれば、消費税と源泉所得税のダブルパンチを受けることとなるため、注意したい(ただし、消費税は原則課税の場合に限る)。
(村田 直 マネーコンシェルジュ税理士法人)
2008.06.30
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