>  今週のトピックス >  No.1666
FRB利下げ休止、当分は身動き取れず
●  8カ月で3.25%引き下げ
  米連邦準備理事会(FRB)が昨年9月から続けてきた利下げをとうとう休止した。金融不安や景気減速に対応するため、信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題が深刻化してから大幅に金融を緩和してきた。その副作用として原油や穀物の価格高騰や世界的なインフレを招いており、今後FRBは景気とインフレの両方をにらんだ難しい対応が迫られる。
  FRBは政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を昨年9月の5.25%から段階的に引き下げてきた。現行は4月下旬に決定した2%。8カ月で合計3.25%下げ、市場に資金を大量に供給してきた。
●  世界的なインフレが問題に
  FRBがここまで極端な金融緩和政策をとったのは、サブプライム問題で金融機関の破たん懸念が出るなど金融システムに不安が出たためだ。政策金利を下げ過ぎると、市場の資金があふれ物価が上昇する恐れもあったが、金融システム不安が実体経済に影響を及ぼすことへの対応を最優先した。その結果、実際に原油や金属、穀物市場に余剰資金が流れ込み、もともと新興国の需要増で高騰していた商品価格がさらに上昇した。
  金利を下げると米国への資金流入が鈍りドル安になる。円相場は3月中旬に1ドル=95円まで上昇。ユーロなども上昇し、ドル安傾向が鮮明になった。ドル安になるとドル建てで取引される原油は割安感が増しさらに買いが入る。これがさらなる原油高を引き起こす悪循環に陥っている。
●  日銀も身動き取れず
  FRBが利下げを休止したのは、このインフレとドル安に歯止めをかけるためだが、肝心の米国経済は回復の兆しが見えない。問題の発端となった住宅価格は下落に歯止めがかからず、消費や雇用も低迷している。利上げで金融を引き締めればインフレには効果的だが、景気回復への動きにも水を差しかねない。
  日本も米国と同じような状況だ。日銀は政策金利を0.5%に据え置いているが、景気の下振れリスクとインフレリスクの挟み撃ちで当分身動きがとれない状況だ。一方、欧州は物価上昇のスピードが速く、欧州中央銀行(ECB)は利上げに動く可能性が高い。円やドルに対してユーロが上昇しているのは、こうした中央銀行の動きをにらんでのこと。日米経済の視界は晴れず、株価もじわじわと下落している。
2008.06.30
前のページにもどる
ページトップへ