>  今週のトピックス >  No.1672
遺産取得課税方式に改正された場合の影響
●  相続税が大きく変わる?
  7月に入り、自民党税制調査会は早くも平成21年度税制改正に向けての議論を開始した。注目を浴びるのはやはり、消費税増税やたばこ税増税の動きであるが、その中で中小企業にとっても特に目を離せない動きがある。それは相続税の課税方式の変更についての検討である。
  この話は今に始まったことではなく、そもそもは平成20年度税制改正にさかのぼる。この税制改正により、今年の10月から「非上場株式等に係る相続税の納税猶予」が新設されることが既に決定しているが、その導入と合わせて、相続税の課税方式を「遺産取得課税方式に改めることを検討する」という文言が平成20年度税制改正大綱に盛り込まれた。
●  現行の「法定相続分課税方式」の問題点
  現在の相続税の課税方式は、「法定相続分課税方式」が採用されている。この方式では、まず相続人が取得した相続財産の合計額から、法定相続人の数に応じた基礎控除額を控除する。そして、その控除後の金額を法定相続人が法定相続分に応じて取得したものとして計算し、それぞれの金額に税率を掛ける。その税額を合計した金額が相続税の総額となり、その金額を相続人それぞれが実際に取得した取得分に応じて按分し、各自税額控除を適用していく、というのが現行方式の流れである。
  この方式では、相続税の総額が遺産分割の結果に左右されないため、税額を減らすための仮装分割を防止できる、という利点がある一方、問題点もいろいろある。
  例えば、「法定相続分課税方式」で控除する基礎控除額は、法定相続人の数によって変わってくるため、相続財産の総額が同額の相続であっても、相続税が同じになるとは限らない。
  また最も大きな問題と思われるのが、相続税が減額される特例の適用についてである。小規模宅地等の特例や特定事業用資産の特例などは、その要件を満たす本人だけが優遇を受けるというのが本来の趣旨であるはずだが、現行方式では、上記のような計算の仕組みとなっているため、要件を満たさない相続人も減額措置の恩恵を受けることとなる。
●  遺産取得課税方式
  では、「遺産取得課税方式」とはどのような課税方式だろうか。詳細は何も発表されていないため推論の域を超えないが、おおよそは、各相続人単独で自分が取得した相続財産の総額に対して一定の税率を掛けたものが、自分の納付すべき相続税になる、という分かりやすい仕組みになると思われる。ただしこの方式にすると、上記の「法定相続分課税方式」での問題点は解決するが、また新たに大きな問題が浮上してくる。それは、遺産分割のやり方次第で、相続税の総額が変わってくるということである。単純に考えれば、相続人が均等に財産を取得した場合には相続税の総額が少なくなるが、遺産が一定の相続人に偏る場合には、相続税の総額は高くなる。どうなるかはまだ全くわからないが、実現すれば、今後の相続に大きな影響を与えることは間違いない。
(村田 直 マネーコンシェルジュ税理士法人)
2008.07.14
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