>  今週のトピックス >  No.1675
従業員の仕事意欲への変化
●  仕事への意欲は高まっていない
  (独)労働政策研究・研修機構では、企業の人材マネジメントのあり方が変化・多様化する中で、従業員の意識がどのように変化してきたかを、企業側・従業員側それぞれに同じ質問を行い回答を比較することで両者の意識の違いを浮き彫りにした。その結果が報告されたので、概略を掲載する。
  まず「3年前と比べて、従業員の仕事に対する意欲は変わったか」という問いには、企業側は4割が「(意欲が)高まった」という回答である。一方、従業員側は「高まった」という回答は3割で、同時に「低くなった」という回答も3割ある。企業側は従業員の仕事に対する意欲は高まっているととらえているが、実際には高まっていないことが分かる。従業員側の回答をその属性別にみると、男女別では、女性の方が「高まった」という回答が少なく、「低くなった」という回答が多い。年代別では、20歳代、30歳代で「高まった」の回答が多く、40歳代、50歳代では、「変わらない」の回答が増えている。
●  意欲を高めるのは会社ではなく仕事自体
  従業員の意欲を高めるために企業側が実行した施策は、「経営方針・事業計画等の情報提供」59.9%、「業績が良い者に対する報酬アップ」36.2%、「職場コミュニケーションの円滑化」35.2%、「社員の納得性を確保した評価制度」31.5%などが挙げられている。
  それに対して、従業員側は「仕事を通じて学べるものが多いから」57.5%、「責任ある仕事をまかされているから」51.4%、「仕事の達成感が感じられるから」36.4%、「職場の人間関係がよいから」32.8%と回答が続き、企業側の施策とはまったく異なっている。会社の施策ではなく、与えられた仕事自体のおもしろさが意欲を引き出していく。
  従業員側に、「仕事に対する意欲が低くなった」理由を尋ねると、「賃金が低いから」46.8%、「仕事の達成感が感じられないから」43.4%、「評価の納得性が確保されていないから」35.6%と続く。
●  不満がでやすい人事施策
  ここに人事施策の難しさを見ることができる。人事施策が不十分であると不満につながるが、十分であっても満足にはつながらない施策がある。たとえば、賃金水準は低いと不満につながるが、高くても従業員の満足につながるわけではない。評価の納得性の確保についても納得性がないと不満につながるが、納得性があっても満足するわけではない。評価に納得性があることを当然のことと考え、それに満足することは無いのである。よって賃金水準は低く過ぎない程度であればよく、評価の納得性もある程度でよいのであろう。
  一方、不十分なら不満につながり、かつ十分なら満足する施策としては、「仕事の達成感の付与」が挙げられる。
出 所:独立行政法人労働政策研究・研修機構「従業員の意識と人材マネジメントの課題に関する調査」
(2008年7月)
(可児 俊信 (株)ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所、千葉商科大学会計大学院教授、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2008.07.22
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