>  今週のトピックス >  No.1677
「プロセス評価」「評価者研修」で高まる従業員の仕事意欲
●  最も採用されている評価制度は、目標管理制度
  独立行政法人労働政策研究・研修機構の発表によると、どのような従業員評価制度を実施しているか企業に尋ねたところ、「目標管理制度」が一番多く導入されていることが分かった。また、「プロセス評価」「評価者研修」などを実施している企業では、実施していない企業と比べ、従業員の仕事に対する意欲が高まっているという結果が得られた。この発表は、同機構が行った「従業員の意識と人材マネジメントの課題に関する調査」結果による。この調査は、全国の従業員数100人以上の企業10,000社(従業員100,000人)を対象に行った。従業員の意識の変化や仕事に対する意欲が多様化している中、従業員のモチベーションと能力をいかに引き出すことができるかが従業員の評価制度にかかっており、各社とも創意工夫を凝らして評価制度作りに取り組んでいるところである。今回の調査では、従業員の意識や仕事の満足感、意欲などについても行っており、企業が評価制度を作るにあたって、非常に参考となる資料となっている。
●  従業員の意識の変化と企業の評価制度の取り組み
  調査結果をみてみると、従業員の仕事に対する意欲は、3年前と比較して、「高くなった」と回答した企業が40.5%と相対的に多いが、従業員に対する調査では「高まっている」と「低くなっている」がほぼ同じぐらいになっている。また、年齢が若い層ほど「高まっている」としている者の割合が高くなっている。意欲が高まった従業員では、理由として「仕事を通じて学べるものが多いから」を挙げる割合が6割弱(57.5%)で最も高く、次いで「責任ある仕事を任されているから」(51.4%)、「仕事の達成感が感じられるから」(36.4%)、「職場の人間関係が良いから」(32.8%)などの順となっており、一方、仕事に対する意欲が低くなった従業員の理由では、「賃金が低いから」を挙げる割合が5割弱(46.8%)と最も高い結果となった。次に、3年前と比較して仕事に関する意識・関心にどのような変化があったかの質問をみてみると、企業、従業員ともに「自分が行う職務分野への関心」、「職場での評価に対する関心」との回答が高くなっている。こうしてみると、「自分が行う業務がどういった意味と価値(評価、責任の重さ)を持っているか、そして、それが自分のキャリア形成においてプラスとなるか、また達成感が得られるか」というところに価値を置いて、従業員は働いているようである。
  こうした従業員の仕事に対する意識に対し、企業がどういった評価制度を導入しているかをみてみると、「目標管理制度」を挙げる割合が6割弱(58.8%)で最も高く、次いで「評価結果の対象者へのフィードバック」(42.3%)、「プロセス評価」(35.5%)、「絶対評価」(29.9%)、「評価者のため研修の実施、拡充」(24.6%)などの順となっている。特に、「評価結果の対象者へのフィードバック」、「プロセス評価」、「評価者のため研修の実施、拡充」を実施している企業では、実施していない企業に比べ仕事に対する意欲が高まったとする従業員の割合が高くなっている。
●  公平な評価をおこなえるかどうかが評価制度運用の課題
  従業員の仕事に対する意欲や意識、関心を踏まえ、従業員のモチベーションと能力を引き出す評価制度の運用を失敗しないためには、当然のことながら公平な評価を行えるかどうかが重要となる。しかし実際には、「評価者によって社員の評価にばらつきが生じること」、「部門間の業績の差を社員個人の評価にまで反映させることが難しいこと」、「評価が難しい部門があること」など、公平な評価を行うには解決しなければならない課題が多くあるようだ。企業は、こうした課題を1つ1つクリアにしていかなければ、どんなにすばらしい評価制度を導入しても運用を成功させることは難しいであろう。
出所:独立行政法人労働政策研究・研修機構
「従業員の意識と人材マネジメントの課題に関する調査」結果
http://www.jil.go.jp/press/documents/20080703.pdf
(庄司 英尚、株式会社アイウェーブ代表取締役、 庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2008.07.22
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