>  今週のトピックス >  No.1678
4割弱の企業が経理財務はすべて会計専門家に委託
●  会計専門家への年間支払報酬は8割弱が100万円未満
  4割弱の中小企業が、経理財務に関する事務を税理士など会計専門家にすべて委託していることが、中小企業庁が新日本監査法人に委託して2月後半に実施した「2007年度中小企業の会計に関する実態調査」で分かった。調査結果(有効回答数4,569社)によると、経理財務に関する事務は、「仕訳伝票を会計専門家に渡し、外注」という回答が48.5%ともっとも多かった。会計専門家は「税理士」が79.8%、「公認会計士」が17.2%。
 次いで「総勘定元帳作成まで社内、財務諸表と税務申告は会計専門家に外注」が26.7%、「財務諸表の作成まで一貫して社内、税務申告は外注」が25.6%、「財務諸表の作成、税務申告まで一貫して社内」は6.0%だった。会計専門家への年間支払報酬は、「50万円以上100万円未満」が45.0%、「50万円未満」が32.5%、「100万円以上200万円未満」が14.4%となっており、100万円未満が全体の77.5%を占めている。
●  会計ソフト、過半の企業が税理士委託で使用せず
  会計ソフトの利用状況については、53.4%と過半の企業が「決算書は会計事務所が作成しているので、自社では利用していない」と回答してもっとも多く、次いで「決算書を社内で作成し、作成にあたっては市販ソフトを利用」が24.7%の企業だった。一方、決算書の作成について、財務管理上、期中の締めの頻度は、「毎月締めを行っている」が59.3%、「1年に1度締めを行っている」が25.7%となっている。
 また、作成した決算書の利用方法(複数回答)は、「過去の売上と利益について比較を行い、その推移を確認」が86.4%、「貸借対照表の借入額の推移を確認」が44.2%、「売上高経常利益率や自己資本比率等の基礎的な経営指標を算出し、確認」が37.8%など。決算書の開示先(複数回答)は、「主要取引金融機関」が77.6%、「役員(代表者を除く)」が51.3%と多いが、「取引先・顧客」(13.0%)や「従業員」(11.9%)への開示は少数だった。
●  「中小企業の会計」の認知度はいまひとつ?
  「中小企業の会計」の認知度については、何らかのことを「知っている」と回答した企業は44.0%となった。一方、「何も知らない」企業が52.7%を占めており、過半の企業は「中小企業の会計」を知らない。「中小企業の会計」とは、中小企業が計算書類の作成にあたって拠ることが望ましい会計処理や注記等を示した「中小企業の会計に関する指針」などの中小企業の会計ルールに関する事項を総称するもの。
「中小企業の会計」を知ったきっかけ(複数回答)は、「税理士」が50.0%ともっとも多く、次いで「金融機関」(26.5%)、「新聞・雑誌」(17.9%)などの順となっている。「中小企業の会計」の普及には税理士の役割が大きそうだが、税理士意識アンケート結果(有効回答数501人)では、「中小企業の会計」をクライアントに「勧めている」との回答は34.9%、「今後勧めたい」が41.9%と前向きな姿勢が多かった。
●  「中小企業の会計」は金融機関の信用力強化に有効
  勧める理由(複数回答)は、「金融機関からの信用力強化に有効」(62.6%)、「経営者による自社の財務状況の適切な把握に有効」(60.5%)、「信用保証協会や金融機関の優遇商品活用に必要」(55.1%)などが挙げられた。
 なお、「中小企業の会計」に準拠して計算書類の作成を行っていると回答した企業は33.6%で、55.3%の企業が「税理士等に一任しているので分からない」としている。準拠して計算書類の作成をしたことによる効果(複数回答)は、「自社の実態が明らかになり、経営判断が行いやすくなった」が48.3%、「金融機関からの評価(信用力)が上がった」が31.4%となっており、税理士が「中小企業の会計」を勧める理由を裏付ける結果となった。
参考資料:「2007年度中小企業の会計に関する実態調査」
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/kaikei/download/080710kaikei_enquete_houkokusho.pdf
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2008.07.22
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