>  今週のトピックス >  No.1682
サブプライム問題、1年たった今も底見えず
●  住宅金融公社の経営不安に発展
  サブプライムローン問題が表面化して1年たった今も底なし沼の様相を見せている。半官半民の住宅ローン証券化業者(住宅金融公社)の連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の株価暴落をきっかけに、信用不安が再燃。一時、ドル安・株安・債券安のトリプル安に見舞われた。原稿執筆の7月第3週時点で市場の混乱は静まったが、肝心の住宅価格に下げ止まりの兆しは見えない。
  米格付け会社がサブプライム関連証券を大量に格下げし、市場に衝撃が走ったのが昨年7月10日のこと。これをきっかけに世界的な金融不安に陥っていくわけだが、年初に書いた「今週のトピックスNo.1574」の通り、問題は長期化している。
●  「公然の政府保証」で混乱は収まる
  信用不安再燃のきっかけとなったのが、住宅金融公社2社の経営不安説だ。2社は住宅ローン融資を集めて、それを担保に小口債券を作り、保証をつけて販売する証券化業務を500兆円規模で担っている。半官半民の2社が発行する小口債券には、2社が経営破たんしても最後は政府が面倒をみるという「暗黙の政府保証」があり、最も安全性の高い米国債に準じる扱いを受けている。
  このため、日本の金融機関だけでも10兆円以上の残高があるほか、世界各国の機関投資家が投資している。もし2社が経営破たんして500兆円規模の債券が債務不履行(デフォルト)になると、巨額投資している世界各国の金融機関が大混乱に陥る。そのため、公的資金注入などの救済策が検討されている。暗黙から「公然の政府保証」になれば、債券の安全性は保たれるとの考えから、市場の混乱は収まりつつある。
●  疑心暗鬼は続く
  とはいえ、サブプライム問題は1年前から何も前進していない。問題の根源は下げ止まらない住宅価格にある。これが住宅ローンやこれを集めた債券の劣化につながり、保有者である金融機関の資産劣化をもたらしている。金融機関の経営不安は大手の銀行や証券会社だけでなく、全米に散らばる地銀などに波及している。個人の資産を預かる地銀に破たんが広がるようだと、米国の実体経済にも大きな影響が出て、世界経済にも変調をきたす恐れがある。
  住宅金融公社の経営不安に対する米当局の処置が早かったため、米株式やドルの下落に歯止めがかかった。しかし、住宅価格が下落しても住宅そのものの買い手がおらず、問題の根本的な解決には程遠い。市場はなお、疑心暗鬼になっており、何をきっかけに株やドルの暴落が起こるかわからない状況が続いている。
2008.07.28
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