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政省令で明らかになった経営承継円滑化法の詳細
●  雇用要件の従業員は正社員のみ
  2009年度税制改正において、経済産業相の認定を受けた非上場中小企業株式にかかる課税価格の80%相当の相続税を納税猶予とする制度の創設が予定されている。同制度の適用要件は、今年10月1日から施行される中小企業経営承継円滑化法の政省令において規定する事項が引用されることになっているが、その政省令案がこのほど中小企業庁から自民党に提出され、明らかになった。
 事業承継税制の適用を受けるためには、5年間の事業継続が要件となる。省令案は、(1)代表者の継続、(2) 雇用の8割以上を維持、(3)相続した対象株式の継続保有といった要件を満たすことについて、毎年1回、経済産業相に報告することを求めている。この雇用の8割以上を算定する際の「常時使用する従業員の数」については、厚生年金保険および健康保険の加入者ベースに算定し、加入資格がないパートなどの非正規社員は含まれない。
●  事業承継の計画的な取組みで救済措置
  また、事業承継税制の適用対象となる会社の範囲は、中小企業基本法の中小企業、非上場会社、資産管理会社に該当しないことが認定要件だが、加えて、事業承継の計画的な取組みが行われたことについて、相続前に経済産業相の確認を受けていることが規定される。主な確認事項は、後継者が確定していることや、現経営者が有する自社株式や事業用資産について、後継者が支障なく取得するための具体的な計画があることなどだ。
 ただし、救済措置として、(1)2008年10月1日から2010年3月31日までの間の相続については、事前に大臣確認を受けることが困難なため、後継者が相続前に役員に就任しているなど計画的な取組みが行われていたと確認時に認められる場合には、事前に大臣確認を受けていたものとみなす、(2)被相続人が60歳未満で死亡した場合は、一般的に、計画的な取組みを行う年齢にいまだ達していないと考えられるため、大臣確認を不要とする。
●  風俗関連事業会社等は事業承継税制の認定対象外
  2009年度税制改正で創設される事業承継税制の適用を受けるためには、経済産業相の認定を受ける必要があるが、事業に無関係な財産管理会社や投資目的会社の株式は除外する方向で検討されている。省令案では、経済産業相の認定の対象外となる資産管理会社等の具体的内容が規定されている。
 大臣認定の対象外となる会社は、(1)上場会社、(2)中小企業経営承継円滑化法の中小企業者に該当しない会社(大企業、医療法人など)、(3)風俗関連事業(風営法の性風俗関連特殊営業)を行う会社、(4)「実質的な子会社」(同族関係者と合わせて発行済議決権株式総数の50%超保有)が上場会社、中小企業者以外の法人、風俗関連事業を行う会社である場合、(5)総収入金額がゼロの会社、(6)常時使用する従業員がゼロの会社、(7)総資産に占める「特定資産」(有価証券、不動産、現預金、ゴルフ場会員権、貴金属など)の合計額の割合が70%以上の会社(資産保有型会社)、(8)総収入金額に占める「特定資産」の運用収入の合計額の割合が75%以上の会社(資産運用型会社)となっている。
 ただし、特定資産のうち有価証券からは「実質的な子会社株式」を除くことで、持株会社は大臣認定の対象とされる。また、不動産からは自社利用不動産を除き、対象外となる会社を実質的な資産管理会社に限定している。
 なお、省令案で示された大臣認定の対象外となる会社以外に、個人資産の管理等を行う法人の利用による租税回避行為を防止する観点から、税法においても適用対象外の会社が規定される予定となっている。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2008.08.04
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