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就業希望年齢、約3割が「70歳まで働きたい」
●  老後は、短時間、少ない日数で働きたい
  厚生労働省によると、何歳まで働きたいかとの問いに対し、約3割が少なくとも「70歳まで」は働きたいと考えていることが分かった。この発表は、老後生活のイメージや生計の手段、生きがいなどの国民の意識や老後生活に関わる社会保障制度等に対する考え方を調査した「高齢期における社会保障に関する意識等調査」(2006年実施)の報告書による。
  男女とも平均寿命が延びている中、体力的にも精神的にも元気な高齢者が増えている。老後も積極的に人生を謳歌したい、プライベートだけでなく、現役ほどではないが仕事も充実したいと考えている人が多く、今回の調査でも、老後の働き方について約5割が「働く日数を減らしたり、時間を短くして働きたい」としている。
  高齢社会を迎え、高齢者の活躍の場の整備が急務となっている。今回の調査は、高齢社会への今後の対応についての資料として大変興味深い内容となっている。
●  年金や医療など社会保障に頼る老後の生活
  調査結果をみてみると、老後の生活といった場合、どういう生活を思い浮かべるかについては、「年金を受給するようになった生活」が最も多く54.3%、次いで「老化に伴い体の自由がきかなくなった生活」が26.3%、「仕事から引退したり、仕事を人に任せるようになった生活」が24.0%、「子どもが結婚したり独立した後の生活」が21.2%となっている。
  年金生活=老後の生活という意識が高いようで、今回の調査でも老後の生計を支える手段として最も頼りにする(1番目に頼りにする)収入源は、「公的年金による収入」の割合が最も多く64.3%、次いで「本人や配偶者の就労による収入」が15.2%となっている。年金制度については、昨今、いろいろな議論があるが、少なくても老後の生活に年金による収入は不可欠であると考えていることが分かる。また、年金受給時期が会社の定年時期と重なっていたこともあり、会社を定年退職し、年金を受給することが老後の生活の開始と思われているところもあるのだろう。
  次に、老後の生活において、生きがいを感じることについては「教養・趣味を高めること」の割合が最も多く44.4%、次いで「家族との団らん」が41.8%、「子どもや孫の成長」が41.7%となっており、プライベートの充実を望んでいる姿が浮かんでくる。逆に、老後において不安に感じるものは「生活費の問題」(33.3%)以上に「健康の問題」の割合が最も多く47.4%と5割近くになっており、老後の生活を送るにあたり健康が重要課題となっている。こうした不安を払しょくするものとして社会保障をあげており、今回の調査でも「老後の生活の準備は、まず自分でするが、全部はできないので、足りない部分は社会保障でみてもらいたい」とする者が51.1%と過半数を占める結果となっている。
●  高齢者のライフスタイルに合わせた施策、サービスの提供が重要
  近年、独り暮らしの高齢者が増えており、孤独死などの問題も多くなってきている。 今回の調査でも、子どもとの同居希望が減少傾向となっている。また、年をとって介護が必要となり自宅で介護を受ける場合などは、家族とホームヘルパーなどの外部の者からの介護を受けたい者が約6割を占めている。こうしたことからも、国は、いままで以上に高齢者が安心して住める街作りやホームヘルパーの働く環境の整備と充実を図っていく必要がある。また、企業も高齢社会に対応した製品開発やサービスを行うことでビジネスが広がり、ひいては、それが高齢者の生活を豊かにすることにつながっていくのではないだろうか。
出所:厚生労働省「平成18年高齢期における社会保障に関する意識等調査報告書」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/08/h0805-1.html
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2008.08.18
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