>  今週のトピックス >  No.1695
老後の社会保障等に対する年齢階級による差
●  老後の不安は健康と生活費
  厚生労働省は、20歳以上の世帯主を対象に高齢期における社会保障等に関する意識調査を行った。ここで注目されるのは、回答者の年齢によって高齢期に対する意識が大きく異なる点である。
  まず老後の不安については、回答者の年齢階級においてもっとも若い29歳以下では、「生活費」を挙げるものが最も多く45.4%、次が「健康」で27.6%となっている。一方で、70歳以上の回答者は「健康」が67.4%ともっとも多く、「生活費」は13.0%と少ない。「健康」は回答者の年齢階級が高まるほど増えており、逆に「生活費」は少なくなっていく。
●  若い年齢は年金に頼らない
  生活費を支える収入源としては、29歳以下の回答者は「公的年金」を挙げるものがもっとも多く43.9%、「就労収入」が21.8%、「貯蓄・退職金」が17.0%と続く。70歳以上の回答者では、「公的年金」が回答の大部分を占め78.5%、「就労収入」は6.4%、「貯蓄・退職金」が2.5%となっている。現時点においては「公的年金」は収入を支えるものとなっているが、若い年代はそれをあてにせず自助努力に頼らざるを得なくなっていることをあらわしている。
●  老後になるほど子どもと同居希望
  老後は健康や介護が心配となってくるが、子どもとの同居については、29歳以下では「子どもが近くにいれば別居してもよい」が39.5%、「別居したい」が11.8%、「同居したい」が11.1%と別居希望が強い。片や70歳以上では、「同居したい」が32.9%ともっとも多くなる。「子どもが近くにいれば別居してもよい」が28.6%、「病気になったら同居したい」が11.7%、「別居したい」は4.7%にとどまり、年齢が高いほど同居希望になっている。
  老後に介護を必要となった場合に生活した居場所としては、29歳以下の回答者は、「老人ホームなどの施設」が29.4%、「グループホームなどの共同生活」が11.0%、「子どもと別居の家」10.5%、「子どもと同じ家」10.2%、「自分の家」7.6%となっているが、70歳以上では「老人ホームなどの施設」が22.1%と減っており、逆に「自分の家」が15.3%と増えており、住み慣れた住居を志向するようになっている。
●  いずれの年代も年金を重要視
  このように老後の課題は大きく分けて、年金、健康(医療)、介護であるが、社会保障において重要と考える分野でも年齢階級による意識の差がある。
  「年金」を重要とするのは、29歳以下では60.7%に対して70歳以上では74.8%と高くなっている。「医療保険」は29歳以下では35.1%に対して70歳以上では37.9%とほとんど変わらない。ただし、「老人医療・介護」では29歳以下では41.6%に対して70歳以上では66.6%と大きく差がついている。
出所:厚生労働省「平成18年高齢期における社会保障に関する意識等調査報告書」(2008年8月)
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2008.08.25
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