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1ドル=110円のドル高水準に、原油急落や欧州減速で
●  3月から15円も上昇
  外国為替市場でドルが買い戻され、8月中旬時点で1ドル=110円台に上昇した。今年1月以来、7カ月ぶりの円安・ドル高水準だ。米国経済に浮上の兆しは見えないが、原油価格の急落や欧州経済の急減速がドル買いを促している。いわば外部要因によるドル高で、長続きするかは不透明感だ。
  円・ドル相場は3月中旬の米金融危機で1ドル=95円台と12年ぶりの円高・ドル安水準となったが、その後はドルが徐々に回復してきた。4月には7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で急激なドル安をけん制する声明を発表。6月にはポールソン米財務長官が「為替介入を排除せず」と発言し、ドル高傾向に拍車が掛かった。7月には米住宅公社の経営不安で一時ドルが売られたが、支援法が成立したことで再びドル高基調に転換した。
●  消去法的なドル買い
  8月に入ってからは原油価格の下落基調が顕著になる。ニューヨーク原油先物相場の指標価格は、8月中旬時点で110ドル台まで下がり、7月11日に付けた最高値147ドルから2割程度下落した。
  原油高とドル安は表裏一体の関係だ。ドルが安くなればドル建ての原油は他の通貨からみて割安となり、投資ファンドなど投機筋の買いが入りやすくなる。こうした傾向をみて、ほかのファンドが「ドル売り・原油先物買い」の取引を仕掛け、一段のドル安と原油高を招いた。これが7月までの動きだった。
  ところが7月発表の欧州の経済指標が景気減速を示すようになると風向きが変わった。7月23日にユーロは対円で1ユーロ=170円に迫り、史上最高値を付けていたがその後は徐々に下落。8月中旬時点では160円台の前半まで下げている。ユーロも買えず、かといって景気後退局面に入った日本円も積極的に買う理由は乏しい。原油急落による安心感もあり、ドルに消去法的な買いが入った。
●  米経済の回復はまだ先
  現時点のドル高が主に外部要因によるものだとすると、今後1ドル=110円台の後半まで上昇するためには、米国経済の回復や米連邦準備理事会(FRB)の政策金利引き上げが条件となりそうだ。金融不安やインフレ懸念から年内に米経済が上向く可能性は低く、FRBも利上げに動くことは難しそうな情勢だ。市場では一段のドル高に懐疑的な声が多い。
2008.08.25
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