>  今週のトピックス >  No.1699
企業の人材確保の状況
●  非正社員の割合が増加
  少子・高齢化や団塊世代の退職など、労働力の確保が大きな課題となりつつある。厚生労働省では、企業の労働力確保の実態を調査し、その結果を報告した。
  まず企業の従業員数の増減について、「5年前(平成14年)と比べた増減」を尋ねている。「増えた」が33.3%、「ほぼ変わらない」29.2%、「減った」37.4%と増減は拮抗している。「増えた」業種は、「医療,福祉」、「情報通信業」であり、「減った」は、「建設業」「飲食・宿泊業」である。企業規模別にみると、企業規模が大きくなるほど「増えた」企業割合が高くなっている。
  また、5年前と比べて常用労働者(非正社員を含む)に占める正社員の割合がどのように変化したかをみると、「正社員の割合が増えた」が18.6%、「ほぼ変わらない」が53.8%、「減った」が27.3%となっている。企業規模別にみると、企業規模が大きくなるほど「減った」企業割合が高くなっており、この5年で非正社員化の流れは進んでいることがわかる。
●  小規模企業ほど採用が困難
  次に採用をみると、過去1年間に、「採用の計画があった」は78.0%で、計画どおりに「採用できた」が46.0%、「採用できなかった」が32.0%、「採用の計画がなかった」が21.9%となっている。
  企業規模別にみると、企業規模が大きくなるほど「計画どおりに採用できた」企業割合が高くなっており、企業規模が小さいほど採用が十分にできていないことになる。
  計画どおりに「採用できた」企業についても、採用の満足度は、「おおむね満足のいくものであった」が43.9%、「あまり満足のいくものではなかった」が38.2%、「どちらともいえない」が17.9%の順となっている。
  採用が充分できないと、既卒者の採用を強化する動きが出てくる。新卒採用枠で正社員を募集するにあたり、既卒者の応募に対して、「応募可能だった」が41.1%、「応募不可だった」が11.8%、「採用の計画がなかった」が46.8%となっている。中途採用者枠で正社員を募集するにあたり、既卒者の応募受付について今後の方針をみると、「応募可能とする」が62.1%、「応募不可とする」が2.8%、「現在のところ未定」が34.8%となっている。企業規模別にみると、企業規模が大きくなるほど「応募可能とする」企業割合が高くなっている。
●  非正社員の正社員登用は6割
  非正社員から正社員への登用制度についてみると、「制度があり登用の実績もある」が27.8%、「制度はあるが登用の実績はない」が5.3%、「制度はないが登用の実績はある」が37.6%、「制度がなく登用の実績もない」が29.1%となっている。登用の実績は65.5%にのぼる。
  このまま採用ができない状態が続くと、将来の中核人材(管理職、専門・技術職)が不足する懸念がでてくる。企業の中核となる人材について、現在の不足感及び将来的に不足する懸念についてみると、「現在不足感がある」が44.2%、「将来的に不足する懸念がある」が39.2%、「現在不足感がなく、将来的にも不足する懸念がない」が16.4%となっている。その理由は、「管理職」では「人員構成の歪み」が49.6%、「既存事業の拡充」が22.9%、「採用者の定着率低下による計画的な育成の困難」が22.2%、「専門・技術職」では「人員構成の歪み」が36.0%、「採用者の定着率低下による計画的な育成の困難」が30.0%、「現業職のうち熟練技能者」では「人員構成の歪み」が34.1%、「採用者の定着率低下による計画的な育成の困難」が30.3%となっている。
  その対策(複数回答)をみると、「管理職」では「業務の効率化、正社員の育成強化等により、正社員が更に中心的な業務を担うようにする」が48.8%、「即戦力として中途採用者枠での採用を増やす」が32.3%、「専門・技術職」では「即戦力として中途採用者枠での採用を増やす」が43.7%、「再雇用等により定年退職者を継続して雇用する」が33.3%、「現業職のうち熟練技能者」では「再雇用等により定年退職者を継続して雇用する」が37.1%、「即戦力として中途採用者枠での採用を増やす」が34.4%と多くなっている。
出所:厚生労働省「平成19年企業における採用管理等に関する実態調査」
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2008.09.01
前のページにもどる
ページトップへ