>  今週のトピックス >  No.1703
国民医療費の現状
●  国民医療費は前年度比微減
  国民医療費の抑制は、社会保障の重点課題の一つであるが、このたび平成18年度の国民医療費の概要が発表された。
  国民医療費に含まれるものは医療機関での医療費(自己負担部分を含む)、薬局での調剤費のうち、処方箋に基づく部分、訪問看護での療養費などである。含まれないものは、正常な出産費用、保険のきかない差額ベッドや歯科材料費、検診や人間ドックなどの予防費用、介護費用や障害者の補助具費用、薬局での通常の売薬などである。ちなみに似た言葉として国民給付費があり、これは国民医療費のうち保険者からの給付でまかなわれたもの、つまり国民医療費から自己負担分を差し引いた額をさす。
  平成18年度の国民医療費の総額は、33兆1,276億円と前年度の33兆1,289億円と微減である。ちなみに前年度の増加率は1.8%であった。医療費は、昭和40年代頃は毎年2桁の伸びを示し、その後昭和の50年代、60年代でも6%台、平成8年頃までは5%前後と、次第に伸びは鈍っている。その後、医療保険の自己負担割合の増加や介護保険創設による介護費用分の切り出しによって、ここ数年は一桁の前半の伸び率である。そしてついに微減となった。
●  公費は老人保健と国保へ
  国民医療費33兆円の支出の内訳を保険制度別に見ると、被用者保険(健康保険、共済組合、船員保険)が7.5兆円(前年度は7.4兆円)、国民健康保険が8.1兆円(同7.7兆円)、老人保健が10.2兆円(同10.6兆円)、自己負担部分4.7兆円(同4.7兆円)、公費負担2.2兆円(同2.1兆円)となっており、老人保健が支出の3割以上を占めている。
  次に33兆円の財源の負担者別では、事業主が6.7兆円(同6.7兆円)となっている。このうち、一部は老人保健に拠出されている。国民が直接負担しているのは、14.3兆円(同14.3兆円)である。このうち9.5兆円(同9.3兆円)は保険料(健康保険、共済組合、国民健康保険等)として負担しており、4.7兆円は医療機関や調剤薬局の窓口での自己負担額として負担している。全体の33兆円の残りは公費、すなわち税金で12.1兆円(同12.0兆円)となっている。公費の大部分は老人保健と国民健康保険に投入される。
  老人保健と国民健康保険に投じられる公費が財政の圧迫要因のひとつであるが、高齢者の医療費は、どのようになっているのか。
●  65歳以降の医療費が全体の半分以上
  33兆円の国民医療費のうち、65歳以上の患者が17.1兆円(前年度16.8兆円)を使い、65歳未満が残りの16.0兆円となっている。65歳以上は人口の20%程度であるが、医療費は半分以上を占めている。そのため一人あたりの国民医療費は、65歳未満が約16万円に対して、65歳以上は約64万円と4倍以上となっている。
  2008年度から改正健康保険法等のもとで後期高齢者医療保険制度が始まり、高齢者の自己負担増が決まった。しかし、高齢者の医療費負担増は国民の総意ではないようである。また生活習慣病予防に向けた保険者への予防の義務も、費用面の問題で十分対応できていないのが現状である。国民への自己負担増はそろそろ限界とみて、疾病予防を前面にだしてきたのだが、その目標達成はまだまだ困難が続くとみられる。
出所:厚生労働省「平成18年度国民医療費の概況」
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2008.09.08
前のページにもどる
ページトップへ