>  今週のトピックス >  No.1706
2009年度税制改正に向けて各省庁の要望出揃う
●  経産省、海外からの投資資金を呼び込む税制等要望
  経済産業省は、ファンドを通じた海外からの投資資金をベンチャー育成や事業再生等に呼び込むファンド税制の創設や、海外子会社利益の国内還流の障害を取り除く国際租税改革などを盛り込んだ。
 ファンド税制については、現行法上、海外投資家が日本に拠点をおくファンドを通じて日本企業に出資した場合、非居住者であるにもかかわらず、一定条件を満たさないとその運用益に対して課税され、居住国と日本での二重課税となるおそれがある。米英などでは単に出資のみを行っている海外投資家が得た運用益は非課税としていることから、わが国でも同様の制度とし、海外からの投資の制約を取り除く考えだ。
 また、海外投資家がファンドを通じて日本企業の25%以上の株式を保有し、その5%以上の株式を譲渡する場合は、譲渡所得に課税する「事業譲渡類似課税」がある。2005年度改正で25%保有の判定を、各組合員単位での判定から、組合単位での判定に強化したため、租税条約を結んでいない国の投資家を中心に新たに課税が及ぶことになった。そこで、事業譲渡類似課税を非課税または判定単位を組合員単位とすることを求めている。
 海外子会社利益の国内還流では、近年日本企業は、急増する海外子会社利益の多くを国内に資金還流せずに海外に留保する傾向があることから、その障害とみられる税制の見直しを要望。海外子会社の配当について、多くの先進国と同様に、外国税額控除制度から国外所得免除方式へ移行し、日本の企業の課税対象を原則国内所得に限定し、海外子会社からの受取配当等は非課税とするよう提案している。
●  金融庁、小口の継続的長期投資非課税の創設を要望
   金融庁は、「貯蓄から投資へ」の流れの促進のため、「日本版ISA」(小口の継続的長期投資非課税制度)の創設と「高齢者投資非課税制度」の導入を柱とする要望だ。
 「日本版ISA」は、小口投資家向けに、毎年一定額まで(例えば100万円)の上場株式等への投資に対する配当を非課税とするもので、英国で導入されている「ISA(個人貯蓄口座)制度」の日本版。長期安定保有を促す観点から、当面10年間の時限措置とする。例えば、毎年の投資限度額を100万円とした場合、1,000万円(100万円×10年間)まで非課税での累積投資が可能となる。
 また、「高齢者投資非課税制度」は、「第二の年金」としての性格を有する高齢者の金融資産からの収入について、税制上の優遇措置を行うもの。高齢者が受け取る上場株式等の100万円以下の配当及び500万円以下の譲渡益について、少なくとも2009年・2010年の2年間は非課税とする。
●  国交省、住宅ローン減税の大幅拡充など税制要望
  国土交通省の改正要望は、今年末で適用期限が切れる住宅ローン減税の5年延長及び大幅拡充などを盛り込んだ。住宅ローン減税については、一般住宅の最大控除額を現行の160万円から300万円に引き上げるほか、最大控除額まで所得税額が控除されない低所得者について、一定額を10年間または15年間、個人住民税から減額して満額の控除を受けられるようにする。
 現行の住宅ローン減税制度は、2008年入居の場合、借入限度額が2,000万円、控除期間は10年または15年の選択制で、控除率は、10年の場合、1〜6年目が1%、7〜10年目が0.5%、15年の場合、1〜10年目が0.6%、11〜15年目が0.4%、最大控除額が160万円となっている。今回の要望では、対象住宅を、一般住宅、長期優良住宅(200年住宅)、一定の省エネ住宅に区分して適用する案を提示している。
 一般住宅では、借入限度額は3,000万円、控除期間は10年または15年の選択制、控除率は、10年の場合は1%、15年の場合は1〜10年目が0.75%、11〜15年目が0.5%。長期優良住宅・一定の省エネ住宅では、借入限度額は3,600万円(一定の省エネ住宅は3,300万円)、控除期間は15年(同10年)、控除率はともに1.2%。この結果、最大控除額は、一般住宅が300万円、長期優良住宅が650万円、一定の省エネ住宅が400万円となる。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2008.09.08
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