>  今週のトピックス >  No.1709
正社員への登用制度、6割以上の企業で実績あり
●  約6割の企業で登用した社員が中核となる人材として活躍
  厚生労働省によると、非正社員から正社員への登用制度と実績について企業に尋ねたところ、「制度、実績ともにある」、「制度はないが実績はある」の2つの回答を合わせると全体の6割以上の企業で正社員への登用実績があることが分かった。この発表は、企業における人材確保、特に正社員の中でも中核となる人材をいかに確保するかという点を中心に調査した「企業における採用管理等に関する実態調査」(2007年実施)による。
 正社員への登用(転換)については今年4月に施行された改正パートタイム労働法にも事業主の義務として盛り込まれた内容である。今回の調査では、約6割の企業で登用した社員が中核となる人材として活躍している事例が「ある」と答えており、登用制度が大きな役割を果たしていることが分かる。
 人口減少、少子高齢化社会を迎える中、企業においても団塊の世代の退職、若年労働者の減少、非正社員の増加等による労働力不足が懸念されており、長期的視点に立った労働力の確保をはじめとした採用管理のあり方が課題となっている。今回の調査は、今後企業が取り組むべき採用管理についての資料として、大変有意義な内容となっている。
●  登用制度は、正社員不足を解決する有効な制度
  調査結果をみてみると、非正社員から正社員への登用制度の有無及び登用実績について、「制度があり、登用の実績もある」が27.8%、「制度はないが登用の実績はある」が37.6%となっており、両方合わせると65.4%と7割近くになっている。このように登用制度の実績が高くなっている背景には、採用環境の悪化や正社員不足の影響が大きいと思われる。今回の調査でも過去1年間(平成18年9月から平成19年8月まで)の採用状況において、計画どおりに「採用できなかった」と答えた企業のうち半数の50.0%が「正社員の採用予定数を確保できなかった」と回答している。また、正社員数についても、5年前と比べて常用労働者に占める「正社員の割合が減った」(27.3%)と約3割が回答している。
 次に、登用制度における年齢上限の有無を職種別にみると、「年齢に上限はない」との回答が「管理職」70.3%、「専門・技術職」68.5%、「事務職」74.5%、「現業職」73.6%と、どの職種においても約7割が年齢に関係なく実施されており、登用に当たっては、経験や実績など年齢以外の要素を重要視していることがうかがえる。また、今後の非正社員から正社員への今後の登用方針をみると、「随時登用していきたい」が35.4%と全体の3割を超えており、特に「医療、福祉」(65.0%)、「飲食店、宿泊業」(51.8%)、「教育、学習支援業」(46.3%)の分野でその傾向が高くなっているようだ。
●  非正社員の活用が人材不足解消への鍵
  現在、企業における中核となる人材の不足が懸念されている。今回の調査でも、「現在不足感がある」(44.2%)、「将来的に不足する懸念がある」(39.2%)と8割以上の企業が回答している。こうした中、多くの企業が中途採用者の増加や定年退職者の継続雇用を行うなどの対応策を講じているが、正社員への登用制度もこうした対応策のひとつとして大きな効果を発揮すると思われる。登用制度は、実際に働いてみないと良い人材か分からない中途採用と違い、非正社員での勤務実績で評価をすることができ、失敗をする危険性を低く抑えることができ、採用コストもかからない。今後は、こうした登用制度だけにとどまらず、パート、アルバイトといった非正社員の活用を考えていくことが企業にとって長期的視点に立った労働力の確保を実現する上でますます重要になっていくであろう。
出所:厚生労働省「平成19年雇用動向調査結果の概況」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/saiyo-kanri/2007/index.html
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、 庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2008.09.16
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