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2008年度の徴税コストは約1.35円
●  バブル期の徴税コストは0.90円
  徴税コストという言葉をご存知だろうか。一般的には100円の税金を徴収するためにかかる費用で表す。国税庁の統計年報によると、2006年度の徴税コストは1.43円だった。3年連続で減少している。過去を振り返ると、申告納税制度が導入されたばかりの1950年の2.79円がもっとも高く、それ以降はおおよそ1円台で推移し、バブル絶頂期の90年に0.90円と1円を割り込んでいる。
 徴税コストはその年度における税収に占める徴税費の割合である。徴税費とは税務執行にかかるすべての費用であって一般会計の歳出予算に計上されるが、2008年度の国税庁予算額は7,227億円である。一方、2008年度の租税および印紙収入は予算ベースで53兆5,540億円(国税組織の税収分は46兆9,709億円)である。この結果、同年度のこの税収に占める徴税費の割合である徴税コストは約1.35円と推計できる。
●  頭打ちの国税職員数が徴税コスト低下の一因
  近年、徴税コストが低下したのは、国民経済の伸長に伴って租税収入が大きく増加したのに対し、徴税費の大部分を占める国税職員数が頭打ち状態にあることが一因となっている。国税庁の定員は、1970年代から1980年代前半には5万2,000人台で推移した後、1989年の消費税導入などに伴い定員が増加したが、1997年にピークとなり、2006年度までの9年間に1,000人を超える定員が減少した。
 2007年度からは、定員増加に転じ、2008年度の国税庁定員は5万6,216人となっているが、1975年度(昭和50年)と比べると7.2%の増加に過ぎない。その間、予算額は約3倍、所得税確定申告数は3.2倍、法人数は2倍に増加している。このように、年々増加する事務量に対処するため、ITを活用した効率的運営に努力してきた結果が、徴税コストの低下の要因ともいえる。
●  民間の協力が不可欠な徴税システム
  さて、この税金100円を徴収するためのコストは、民間企業の経営コストから比べればべらぼうに安いのだろうが、考えていただきたいのは徴税システムでは民間の協力・寄与の度合いが大きいことである。源泉徴収義務者による源泉所得税の徴収代行をはじめ所得税・法人税の申告納付など、税収のほとんどの部分は納税者の協力によって入ってくる仕組みだといえる。
 その仕組みを維持するための税務行政の費用が例えば2008年度でいえば7,227億円なのであって、民間の協力・寄与する部分をコストに含めれば、徴税コストは大幅にアップするに違いない。だから、国税当局の努力があまり必要としない徴税は除いて、脱税の把握や滞納された税金を納付させるためにかかるコストが100円あたりどれぐらいかかるのか、といったことを公表して欲しいと思うのだが、いかがなものか。
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(浅野 宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2008.09.16
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