>  今週のトピックス >  No.1713
原油価格100ドル割れ、投資マネーは債券に避難
●  2カ月で3割下落
  ニューヨーク原油先物相場は9月12日、約5カ月ぶりに1バレル100ドルの大台を割り込んだ。米リーマン・ブラザーズの経営破綻を受けた信用収縮の影響で、9月中旬時点では90ドル台前半まで下げている。7月11日には史上最高値となる147ドルを付けたが、約2カ月で3割の大幅下落となった。筆者は6月2日付の「今週のトピックスNo.1650」で「原油価格の適正水準は90―100ドルで、この水準に戻るのは早いかもしれない」と書いたが、ほぼ予想通りの展開となっている。
 この原稿では「原油価格は5月下旬時点で130ドル台だが、筆者の感覚として実需で70−80ドル、投資・投機で50−60ドル程度ではないかと考えている」と書いた。投資・投機のうち、年金基金などの長期保有目的のいわゆる「投資マネー」とヘッジファンドなど短期売買を繰り返す「投機マネー」の割合をざっくり半々とし、投資マネーはそう簡単に資金を動かすことができないので、「30ドル前後の価格押し上げ要因は残る」と書いた。そこから導いたのが「90−100ドル」という水準だ。
●  今後は80―110ドルで推移?
  原油相場はその後、投機筋主導で7月まで上昇が続いたが、実需を伴わない「原油バブル」が長続きするわけはない。米商品先物取引委員会(CFTC)による投機マネーの規制強化や世界的な景気減速による原油需要の減退などを背景にひとたび価格下落が始まると、投機マネーが一斉に市場から逃げ出し記録的な下げ幅となった。
 さて、問題はこの先どうなるかだが、筆者は80ドル台で下げ止まった後は、80−110ドルで推移するのではと考えている。前述の通り、実需の70−80ドルが価格の最低ラインとして、根雪のように積もっていく投資マネーが30ドル前後の幅で価格を押し上げる構造が今後も続くとみている。投機マネーが市場で再び「暴れる」ことも考えられるが、7月までの価格高騰が「やはりバブルだった」と市場が共通認識を持った以上、140ドルを超えてまで原油を買いに行くのは投機家としても難しくなった。
●  消去法で債券買い
   今年前半、商品市場に向かっていた投資・投機マネーは現在、株も買えず不動産も値下がりしているため、一時的な逃避先として債券市場に向かっている。日本の長期金利は9月中旬時点で1.4%台、米国の長期金利は3%台半ばといずれも債券が買われ金利が低水準になっている。世界景気が減速感を強め、金融市場も不安定な状況が続いており、株高が見込めるような状況ではない。投資・投機マネーは次にバブルを発生しそうな市場を血眼になって探しているに違いない。
2008.09.22
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