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裁判員休暇の賃金の取り扱い 86%が有給
●  裁判員制度開始まで8カ月をきり、制度化が急ピッチで進む
  平成16年5月21日に「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が、成立し平成21年5月21日から裁判員制度が実施される。裁判員制度開始まで8カ月をきり、各企業は、従業員が裁判員制度に選ばれた場合の休暇の取り扱いについて情報収集し、制度の導入に向けて動いている最中であろう。
 裁判員になる確率は、約5,000人に1人と言われているが、決して他人事とはいえない確率であることは確かである。裁判員としての必要な休みを取得することは「公民権の行使」として労働基準法により保証されているので、休むことは自由だが、その際の賃金の支給の有無については法による定めがないこともあり、各企業が個別に定めることとなる。
 今回、日本経団連は、「裁判員休暇制度 アンケート集計結果」を公表した。この調査は、日本経団連の経済法規委員会である197社を対象に実施されたもので、回答数は93社となっている。その調査結果によると、休暇を付与した当日の賃金の取り扱いについては、有給が86%を占めている。今回の調査対象は、日本経団連に加入している企業ということで比較的大規模な企業が中心となっているが、他の大手企業や中堅企業も自社の制度実施に向けて今後急ピッチで動いていくと予想される。
●  裁判員のための休暇制度等の制度化実施済みが63%
  裁判員のための特別休暇制度等の導入状況は、既に63%もの企業で制度化が実施されており、導入等を検討しているのも37%とアンケートに回答したすべての企業は、導入を実施または検討しているという結果となった。
 また今回の調査結果以外の資料(財団法人労務行政研究所)によると、休暇を付与した当日の賃金については、「通常勤務時とまったく同じ(有給)扱いとする」が89.2%と多数を占めている。「休務した分は無給とする」企業は全体で8.4%とほんのわずかであった。
 中小企業は、人員の面だけでなく景気の低迷でただでさえ苦しい中で、どのように対応していくかは悩むところだ。実際のところとしては、裁判員としての活動のため、会社を休んでも従業員は、日当をもらえるので会社としては、ノーワーク・ノーペイの原則に従い、対応するというのも選択肢の1つになるだろう。また日当をもらった分だけを控除するというのも1つの方法として考えられる。
●  就業規則には、裁判員休暇制度について明記するのがベスト
  就業規則における取り扱いに関する質問では、「新制度を創設し、就業規則を改正(改正予定含む)」が、19% 、「従前の規定に例示を加え、就業規則を改正(改正予定含む)」32%、「従前の規定に解釈上含むとし、就業規則は改正せず」が、34%という結果となった。
 就業規則を変更せずに対応する企業の割合が思った以上に高い結果となったが、実務上は明確に定めておくほうが望ましいだろう。例えばパート・アルバイトや派遣社員や嘱託社員の場合は、どのように取り扱うのかということも明確に定めておかなければ問題になる可能性もある。いずれにしても各企業は、従業員がわかりやすいように裁判員休暇制度を定め、その届出方法や運用について就業規則に細かく記載しておくことが、求められる。今後も裁判員制度が開始するまでには、さまざまな調査結果やニュースなどがメディアに取り上げられることとなるのでいい部分は参考にしていくのがよいのではないだろうか。
出所:日本経団連 裁判員休暇制度アンケート調査結果
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2008/064.pdf
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、 庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2008.09.29
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