>  今週のトピックス >  No.1719
労働者派遣法改正の具体的内容
●  急ピッチの法改正作業
  労働者派遣法の見直し作業が進んでいる。労働者派遣が労働市場において果たす役割については小さくないことは認識されている。しかし、法規に違反した派遣が横行しているうえ、雇用の不安定な派遣での生活が定着している者もいるなど、問題点も多い。そこで厚生労働省はこうした弊害を是正する目的で法改正を試みている。この夏に同省の研究会で報告書がまとまり、引き続き労働政策審議会の職業安定分科会の労働力需給制度部会にて検討が進められ、分科会への報告、審議会への報告、大臣への建議とスピーディに進められ、この秋の臨時国会において労働者派遣法の改正を目指す。同法は1985年の成立以来、一貫して規制緩和の方向で緩和されてきたが、はじめて規制強化に向けて舵がきられる。
●  短期派遣の禁止と例外18業種の明示
  規制強化の主なポイントは、(1)日雇い派遣と30日以内の派遣の原則禁止、(2)グループ内企業に派遣する労働者の人数の割合を8割以下に規制、(3)派遣料金の中の派遣会社の収入の公開を義務化などである。
 建議は、1日単位の雇用だけでなく30日以内の雇用契約も原則禁止とした。ただし、例外的に短期派遣を認める18業種をポジティブリストとして列挙している。具体的には、ソフトウエア開発、通訳・翻訳・速記、添乗、書籍等の編集などである。
 また「登録型派遣」を常用型に切り替えることを促されており、(1)通常の労働者または期限のない労働者としての雇用、(2)有期派遣者に対する教育訓練、(3)紹介予定派遣への対象化などが派遣元に努力義務として課され、登録型派遣から常用型への移行とそれに伴う雇用の安定化が求められている。
●  派遣元のマージンの公開
  雇用の安定だけでなく、処遇の改善に関する努力義務も派遣元に課される。派遣労働者の職務内容や成果、意欲・能力・経験を踏まえて賃金を決定する努力が求められる。
 グッドウィル社では、不明朗な給与天引きが問題視されていたが、派遣労働者の賃金だけでなく、派遣料金も情報公開することを義務付ける。派遣料金と派遣賃金の差額は、いわゆるマージンとして搾取とみる見方もあるが、派遣会社の取り分には、教育訓練費や福利厚生費も含まれていることから、それを情報公開することで、良質な派遣会社の選別につながる。
 さらに大企業などが子会社で派遣会社をつくり、グループ企業に対してだけ派遣することも直接雇用の回避につながるとの観点から、グループ企業への派遣を、その会社が抱える派遣労働者の8割以下にすることとなった。8割を超えた場合は、最終的には許可の取消しに至る。
●  派遣元の労災責任は見送り
  一方で、報告書の段階で検討されていた派遣先の労災責任については見送られた。
 今回の労働者派遣の規制強化は、グッドウィル社の不祥事や格差問題の解消が発端である。日本の国際競争力の確保を大義名分にして現状の労働者派遣を現状のまま放置しておくわけにもいかない。人材のミスマッチが今の状況を生んでおり、社会全体での教育体制や人材育成を行うことが根本的な解決といえる。
出所:厚生労働省「労働者派遣制度の改正についての建議」
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2008.10.06
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