>  今週のトピックス >  No.1722
宗教法人のペット供養は収益事業
●  ペット供養に対する課税で最高裁が初判断
  宗教法人が行うペット葬祭業が収益事業に当たるかどうかが争われた事件で、最高裁第2小法廷(津野修裁判長)は9月12日、原告である慈妙院(愛知県春日井市)の上告を棄却する決定を行い、収益事業として法人税を課した税務署の処分を認めた。ペット供養に対する課税について最高裁が判断を示したのは初めてだが、今年7月に寺院が行うペット等の遺骨の保管施設は宗教施設に当たるとの最高裁判決もあり、議論を呼びそうだ。
 判決によると、慈妙院は、1983年ころからペット葬祭業を始め、死亡したペットの引き取り、葬儀、火葬、埋蔵、納骨、法要などを行い、飼い主から動物の重さや火葬方法との組合せにより8000円〜5万円の供養料を受け取るなどしてきた。
 これに対し、税務署は、慈妙院のペット葬祭業は収益事業に当たるとして、2001年3月期までの過去5年間の法人税など約670万円の課税処分を行った。
●  一般事業者と変わらない事業内容と判断
  そこで慈妙院は、ペット葬祭業は利益を追求しない宗教行為なのに、収益事業とみなして課税するのは不当だとして、課税処分の取消しを求めたわけだ。
 判決は、民間業者との課税の公平性の確保などの観点から、「サービスに対する対価性や喜捨等の性格の有無、宗教法人以外の一般業者との競合関係などから社会通念に照らして総合的に検討して判断するのが相当」との考えを示した。
 その上で、「慈妙院が受け取る供養料等はサービスの対価性があり、お布施などの喜捨等の性格はなく、また、内容や料金等の定め方なども一般事業者と基本的に同じで、競合関係にある」と指摘。「依頼者の要望に応じてペットの供養をするために、宗教上の儀式の形式により葬祭を執り行っていることを考慮しても、このペット葬祭業は、収益事業に当たると解するのが相当」との判断を示している。
●  ペット供養施設課税を巡る訴訟は寺院側勝訴の判決
  一方、今回の最高裁判決に先立つ7月、最高裁は、寺院が行うペット等の遺骨の保管施設は宗教施設か否か、さらに固定資産税の賦課が妥当か否かが争われてきた事件で、東京都の上告を棄却する決定を行い、寺院側勝訴の判決を下している。この訴訟では、寺院側が一審敗訴の後、今年1月の東京高裁では、宗教施設に当たるから固定資産税の賦課は違法と判示して寺院側の主張を認めたため、東京都が上告、最高裁での再逆転判決を狙っていた。
 この事件は、江戸時代から動物供養の寺として知られる東京都内の寺院・回向院に対して、東京都が、ペットの遺骨等を収蔵保管している建物とその敷地は民間業者が行う収益活動類似の性格を有する行為の用に供する資産であると認定し、固定資産税等を賦課してきたため、寺院側がその取消しを求めて提訴していたもの。
 一審は東京都側の主張を認めて固定資産税等の賦課決定処分を適法と判断したものの、二審の東京高裁における控訴審は、江戸時代から動物供養が行われ、地域住民からも信仰の対象とされてきたとして、その歴史的背景を踏まえて宗教施設にあたると判示、寺院側の主張を全面的に認める逆転判決を下した。そこで、控訴審の判決を不服とした東京都側が上告して再度、その妥当性を主張していた。
 結局のところ、宗教法人が行うペット供養が収益事業に当たるかどうかは、個々の事業内容から総合的に判断されるようだが、釈然としないところがあるのは否めない。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2008.10.06
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