>  今週のトピックス >  No.1724
経営承継円滑化法〜遺留分はどう変わったのか(2)
●  遺留分特例の概要
  今回は、前回(No.1720「経営承継円滑化法〜遺留分はどう変わったのか(1)」)に引き続き、10月1日に施行された経営承継円滑化法で新設された遺留分の特例についてお届けする。
 まずはおおまかにこの制度の概要をご説明しておきたい。
 この特例制度は、一定の非上場会社が旧代表者から後継者に自社株を贈与した場合、推定相続人全員の合意、経済産業大臣の確認および家庭裁判所の許可を受けることを前提に、その自社株を遺留分算定の基礎となる財産から除外したり、または遺留分算定に含まれる自社株の評価額を固定したりすることができる、というものである。
 経営承継円滑化法自体は、10月1日に施行しているが、この遺留分特例については周知期間を置く意味もあって、施行は来年3月1日となっている。ただし、施行日前の贈与についても、合意の対象とすることができる。
●  特例の対象者
  この特例の対象者をもう少し具体的に見ていくことにする。まず大前提として、対象となる会社は、3年以上継続して事業を行っている非上場会社、とされている。
 その中で、業種ごとに資本金の額や従業員数の要件が定められており、それを満たすことが条件となる。基本的には中小企業基本法に定められている中小企業の要件なのだが、ソフトウエア業など一部でその要件が拡大されている。
 その対象会社において、先代の旧代表者(現代表者でも可)から、その推定相続人である後継者(複数いる場合にはいずれか1人)に自社株式を贈与した場合に、特例の対象となる。さらに後継者は、特例の合意時に議決権の過半数を有しており、かつ代表者に就任していることが条件となる。ただし、この特例を利用する以前に既に議決権の過半数を有している場合には対象外となる。
●  合意の種類は2種類+オプション
  この特例では、推定相続人間で2種類の合意をすることが認められている。それが、「除外合意」と「固定合意」である。
 「除外合意」とは、旧代表者から後継者に贈与した自社株を、遺留分算定の基礎となる財産から除外するという合意である。完全に除外することで、遺留分減殺請求のリスクがなくなる。
 一方、「固定合意」とは、自社株を遺留分算定の基礎となる財産から除外することまではしないが、遺留分算定の際に基礎となる財産に加算する自社株の価額を一定金額に固定するという合意である。今後、株価が上昇すると思われる際に有効な方法である。この際の一定金額とは、税理士等の第三者が客観的に評価した価額とされている。
 この2つは併用して利用することも可能である。そして、この2種類の合意のどちらかを利用しているときに限り、自社株以外の贈与財産についても除外合意を行うことができる、というオプションが認められている。
 これらの合意は推定相続人全員で書面により行われ、その後、経済産業大臣の確認、家庭裁判所の許可を得ることで、効力が発生する。申請や申立手続は後継者が単独でできることとされている。
(村田 直 マネーコンシェルジュ税理士法人)
2008.10.14
前のページにもどる
ページトップへ