>  今週のトピックス >  No.1725
改正パートタイム労働法で半数が「処遇見直し」
●  正社員と同視すべきパートタイマーの雇用は1割以下
  財団法人労務行政研究所によると、「改正パートタイム労働法」の施行に伴い、半数近くがパートタイム労働者の処遇を「見直した」ことが分かった。この発表は、今年4月1日に施行された「改正パートタイム労働法」に対する企業の対応についての調査結果による。「改正パートタイム労働法」の施行により、事業主は、@労働条件の文章交付等・待遇の説明義務、A均衡待遇の確保、B通常の労働者への転換の推進等の措置が求められることとなった。特に、正社員と同視すべきパートタイマーについて、正社員との差別的取扱いが禁止された点が注目すべきところであるが、企業の状況をみると「正社員と同視すべきパートタイム労働者を雇用している」と答えた企業は全体の1割にも満たない結果となっている。パートタイマー等の非正規社員が年々増加している現状において、今回の調査は、非正規社員に対する企業の考え方と取り組み状況が分かる資料として大いに参考にしたいところである。
●  正社員への転換制度における転換の際の基準は、「能力」「勤務成績・勤務態度」
  調査結果をみてみると、「改正パートタイム労働法」の施行に伴い、パートタイマーの処遇を「見直した」企業は48.1%であった。見直していない企業が半数以上あるということになるが、これは、改正法にまだ対応できていない企業があるだけでなく、改正法の施行前から法が求める程度の処遇をすでに実施していた企業もあるためと思われる。これを規模別にみると、1,000人以上の企業では6割に上るが、1,000人未満の企業では4割程度となっており、中小企業においては、まだこれからであることが分かる。また、見直しの内容をみてみると、「パートタイマーの正社員への転換を推進するための措置を講じた」が過半数の55.7%で一番多く、「正社員とパートタイマーとの職務内容の区分を厳格にした」が35.2%、「パートタイマーの処遇を変更した」が34.1%となっている。
 次に、「正社員への転換を推進するための措置」についてみてみると、「正社員への転換試験制度を設ける」と答えた企業が54.2%と過半数に上っている。その他としては「正社員を社外で募集する場合、その募集内容をすでに雇用しているパートタイマー・フルタイマーに周知する」が37.5%、「社内で正社員の配置を行なう場合に、その配置に応募する機会をすでに雇用しているパートタイマー・フルタイマーに与える」が29.2%となっている。正社員に転換する際の基準としては、やはり「能力」が一番多く、89.5%と約9割が挙げており、以下、「勤務成績・勤務態度」(73.7%)、「業務上の必要性」(67.5%)と続いている。
 「正社員への転換試験制度」の結果については、実際はあまり考慮していない企業が多いようで、「能力」「勤務成績・勤務態度」といった日ごろの働きぶりへの評価が大きなポイントとなっているようである。
●  企業の課題は、賞与、退職金も含めた均等待遇の実現
  これまで述べてきたように、企業は、法改正によりパートタイム労働者の処遇を見直してきている。しかしながら、「賞与」は6割以上、「退職金」については8割近くの企業が、均等待遇を「特に実施していない」と答えているように、その対応にはまだまだ改善の余地があるといえる。企業がパートタイマーを雇用する大きな理由は、人件費の効率化であるが、労働力の確保を実現するには、正社員だけではなくパートタイマーをいかに有効活用していくか、そしてそのための制度や待遇の改善がますます重要となっていくであろう。
出所:財団法人 労務行政研究所
「改正パートタイム労働法に企業はどう対応したかに関する調査結果」
https://www.rosei.or.jp/contents/detail/9692
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、 庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2008.10.14
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