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経団連、11年度までに消費税率10%への引上げを提言
●  中低所得者層に対する大胆な所得減税も同時に実施
  日本経団連はこのほど、税・財政・社会保障制度の一体改革に関わる中長期的な方向性を示した上で、当面2009年度から2011年度までの3年の間に求められる改革についての具体的な提言を行った。
 そのなかで、今後の税制改革においては消費税をわが国のもっとも基幹的な税目として位置づけていくべきであるとして、2010年度、遅くとも2011年度までに、社会保障費の財源確保や財政再建に向けて、消費税率を5%引き上げ10%とすることを求めた。
 消費税率引上げは、中低所得者層の負担緩和に向けた大幅な所得税減税と一体的に実施することで、景気刺激策や消費税率引上げによる負担の緩和を図ることを提案。中低所得者層(おおむね年収500万円以下の世帯)に対し、5年程度を期限として消費税率1%相当程度の規模の大胆な定額減税(例えば、世帯あたり10万円程度)を行う。その際、所得税から控除しきれない税額については、個人住民税から控除できるようにする。
 消費税率10%は、疲弊した地方の財源確保と活性化に資するよう、国7%、地方3%の配分とする。消費税率の引上げに際しては、基礎的な食料品等は極力品目を限定して軽減税率(現行の税率5%を維持)の適用を検討する。生活必需品における負担増大の回避という観点からは、例えば、一定の所得階層ごとに消費税負担相当額を所得税から税額控除する制度(カナダの連邦消費税税額控除制度等)なども検討に値するとした。
●  国際的整合性を踏まえた法人実効税率の引下げが必要
  消費税率の引上げを提言する一方で、諸外国で進む法人実効税率引下げ競争への対応がわが国経済成長のための主要課題だとしている。欧米諸国では、自国企業の競争力強化や企業立地促進のために法人実効税率の引下げが相次いでおり、いまやUC平均で28%とわが国(約40%)との税率格差は10%以上に及ぶと指摘した。
 このため、国際的な整合性を踏まえ、30%程度へ法人実効税率を引き下げるとともに、地方法人特別税を廃止し、地方消費税の拡充のなかで地方法人二税の見直しを求めた。また、現行では納税義務が生じない欠損法人にも適切な応益負担を行うよう、地方法人住民税における均等割のような簡素な応益税を国税に導入することを提案している。
●  最優先課題は消費税率引上げと強調
  そのほか、当面2009年度においては、停滞の度合いを深めている現下の経済情勢を打破し、早期回復軌道にのせるべく、経済活性化、成長に資する措置を講ずることを要望した。
 具体的には、内需拡大の刺激策として、本年末で期限を迎える住宅ローン減税などの住宅取得促進税制の維持拡充や、低炭素社会・日本の実現に向けた省エネ、環境対応型製品普及のための税制措置、さらには日本企業の海外獲得利益を国内還流させる税制措置や企業のグローバルな展開に即した国際租税制度の見直しなどを、2009年度税制改正において行う必要がある税制措置として挙げている。
 以上が、税・財政・社会保障制度の一体改革に関する提言のなかでの税体系の抜本改革の概要だが、日本経団連は、当面の税制抜本改革で最優先すべき課題は2011年度までの消費税の着実な引上げであることを、最後に改めて強調している。
(浅野宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2008.10.14
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