>  今週のトピックス >  No.1727
企業における従業員の健康管理
●  定期健診受診率は8割
  厚生労働省では5年ごとに企業の健康管理対策についての調査を行っており、2007年度調査分の結果がこのほど報告された。健康保険法が改正され、メタボ対策が保険者に義務づけられるなど従業員の健康管理に関心が高まるなか、企業の現状はどうであろうか。
  まず定期健康診断の実施率は86.2%と高く、300名以上の規模では100%である。ただし、従業員が定期健診を受診した割合は81.2%と8割であり、企業が実施しても受診しない従業員も多い。受診しない従業員は非正社員に多く、正社員の受診割合は93.4%だが、契約社員は82.1%、パートタイムは49.2%となっている。
●  検診後の事後対策が不十分
  定期健診だけでなく、がん検診や人間ドックなど法定超の検診を行う企業は全体の41.1%である。内訳はがん検診が29.3%、人間ドックが27.7%、両方実施が15.9%である。実施率は企業規模による差が大きく、5,000名以上の企業では法定検診超の検診実施率は98.3%、1,000名以上5,000名未満では91.7%だが、100名以上300名未満では62.7%、50名以上100名未満では49.4%と大きく差がある。
  こうした検診を受診する従業員の割合は、34.7%と従業員全体の3割以上にのぼる。受診対象外の従業員もいることから、対象者の受診率はかなり高いのではないか。
  次に、受診した従業員に何らかの所見が見られた場合の会社の対応としては、「再検査・精密検査を指示した」が78.7%ともっとも多く、「健康管理等について医師から意見を聴いた」が27.3%となっている。せっかく所見が見つかっても、積極的に指導しておらず、本人任せになっているようだ。
●  職場環境の整備は重要と認識
  企業が十分に従業員の健康管理ができていないようだが、そこには健康管理対策上の課題がある。
  企業の健康管理担当者のほとんど(98.4%)が、何らかの課題があるとしており、まずは「定期健診の完全実施」が挙げられる。69.3%の企業が課題としている。先述のように従業員の受診率は8割で、特に非正社員の受診率が低いためである。次に課題とされているのが、「定期健診後の事後措置」であり47.3%である。これも先に述べたように企業は十分に手が回っていない。3番目は「職場環境の整備」であり、30.2%。長時間労働や要員不足など従業員の健康を阻害する職場の状況があると思われる。4番目は28.9%で「心の健康に対する対策」となっている。これは職場環境の整備と裏腹である。以下「人間ドックの実施・充実」27.8%、「がん検診の実施・充実」23.3%、「中高年労働者の健康対策」22.3%と続く。
出所:厚生労働省「平成19年 労働者健康状況調査結果の概況」
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2008.10.20
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