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暗黒の1週間、大恐慌にはならず
●  想定を超える大混乱
  10月5日から11日の1週間はまさに「暗黒の1週間」。世界の金融市場が完全に崩壊した。筆者は新年の今週のトピックス(No.1574)で「2008年の世界経済、サブプライム問題が長期化」という原稿を書いたが、筆者の想定を超える大混乱となった。この週に起きたことだけを列挙しても、その異常さがわかる。

―日経平均株価が8,000円台、NYダウが一時5年半ぶりに8,000ドル割れ
―円相場が一時1ドル=97円台に
―米欧6中銀が0.5%の協調利下げ、中国なども追随
―英国が大手銀行に資本注入決定、欧州各国で預金保護が相次ぐ
―米国ではブッシュ大統領が金融機関への資本注入を表明
―日本では上場REITが初めて経営破綻、大和生命も破綻
―G7が金融破綻防ぐ行動計画に合意

  いずれも平時では考えにくかった事態だ。過去30年間、米欧が主導してきた「金融の時代」が終焉し、パラダイムシフトが起こることを予感させる。市場が正常な機能を回復するまで、ある程度の時間がかかるだろう。経済の動きが停滞し、実体経済に影響が波及することも必至だ。
●  現在は世界が協調
  ただ、1930年前後に起きた大恐慌の再来にはならないというのが筆者の見立てだ。当時は金本位制で、通貨の供給量は金の保有量に縛られていた。しかも、保護政策が横行し世界的な協調体制をとることが難しかった。現在は違う。世界の中央銀行が連携し、市場に向かって資金を大量に供給し続けている。
  金融機関の相互不信を理由に、こうした供給資金が市場の隅々まで行き渡らないのは問題だが、各国政府は金融機関への資本注入に動き始めた。金融機関の健全性が保たれるようになれば、こうした相互不信は徐々に晴れ、マネーは正常に流れ始めるだろう。実体経済が大恐慌に陥る前に金融市場が正常な機能を取り戻すと筆者は見ている。
  とはいえ、行き過ぎた金融工学の時代は終わり、大量のマネーが市場を大きくゆがめるような状況は規制されるだろう。相場回復の道のりはゆっくりしたものになるに違いない。
2008.10.20
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