>  今週のトピックス >  No.1731
伸び悩む国民年金基金加入者数
●  加入者数はいまだ69万人
  厚生年金または共済組合に加入しているサラリーマンと国民年金に加入している自営業者などの第1号被保険者では、将来受け取る公的年金額に大きな格差が生じる。この格差を解消するため、国民年金基金制度が国民年金の上乗せ年金として1991年4月に創設された。国民年金基金は厚生労働大臣の認可を受けた法人で、47都道府県に設立された地域型基金と、25の職能型基金の2種類がある。地域型国民年金基金は、1991年5月に全国47都道府県で一斉に設立され、職能型国民年金基金は、25の職種について1991年5月より順次設立された。これにより、自営業者などの公的な年金は、「基礎年金+国民年金基金」の二階建てになった。
  バブル崩壊と同時期に創設された国民年金基金は、大きな期待を背負いながらもそのタイミングの悪さから不本意な経緯をたどり、加入者数も期待されたほど増えないまま推移してきた。
  1998年度末に累積加入者100万人を突破したものの、その後は年間5万人程度の新規加入者に止まり、2006年度末の累積加入者は141万人である。なお、累積加入者は毎年の新規加入者の累計であり脱退は考慮されてない。2006年度末の実加入者は69万人である。つまり加入した第一号被保険者の2人に1人は脱退していることになる。
●  積立不足の縮小
  国民年金基金が抱える課題は多いが、まずは積立不足が指摘される。
  国民年金基金は、加入員の掛金を積立て、それを財源として将来の年金給付を賄う事前積立方式である。よって将来の給付に必要な責任準備金に対して、現に保有する年金資産がそれと同等以上であることが求められる。年金資産の運用利回りは2000年度から2002年度が3年連続してマイナス利回りになる最悪の状況が続いた結果、責任準備金に対する年金資産の積立不足が発生し、2002年度末には年金資産額が責任準備金額の71%にしか満たない水準にまでなった。そのため予定利率も引き下げが続き、老後資金準備手段としての魅力も薄れていった。低金利下にあって、予定利率は5.5%から、1995年(4.75%)、2000年(4.0%)、2002年(3.0%)、2004年(1.75%)と連続して引き下げられ、現在に至っている。
  その後運用利回りが回復し、2006年度末では98%まで回復している。ただし、サブプライムショック以降の株価下落を反映して2007年度の利回りはマイナス11.8%となったため、積立不足が拡大したと見られる。
●  国民年金納付率低下の影響
  加入者の脱退が多いのは、国民年金の未納者が多いことも影響している。国民年金基金は国民年金の保険料の未納者や免除者(一部免除・学生納付特例・若年者納付猶予を含む)は加入できない。2006年度末において国民年金第一号被保険者は2,123万人だが、免除者、納付特例者、納付猶予者を除くと1,540万人となる。これに対する国民年金保険料の納付率は66.3%であることから、納付者数イコール国民年金基金加入可能者数は1,021万人となる。納付率は毎年低下傾向にあることから、加入可能者数は今後も少なくなるとみられる。この状態が続けば国民年金基金の加入者も増加は期待できない。
出所:国民年金基金連合会ウエブサイト
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2008.10.27
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