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個人事業者の申告漏れ、2年連続増加の9,635億円
〜2007事務年度における所得税等調査状況
●  全体の7%の実地調査(特別・一般調査)が申告漏れの6割を把握
  近年の所得税調査の特徴は、高額・悪質と見込まれるものを優先して深度ある調査を重点的・集中的に実施する一方、実地調査までには至らないものは電話や来署依頼による“簡易な接触”で済ます調査方針にある。
  国税庁がこのほど公表した2007事務年度の個人事業者に対する所得税調査状況によると、今年6月までの1年間の所得税調査は、前年度に比べ4.0%増の82万7千件に対して行われ、うち71.6%にあたる59万2千件から前年度より5.1%増の9,635億円の申告漏れ所得を見つけた。追徴税額は6.4%増の1,322億円。1件あたりの平均では117万円の申告漏れに対し16万円を追徴している。
  実地調査における特別調査・一般調査(高額・悪質な不正計算が見込まれるものを対象に行う深度ある調査)は、前年度比4.8%減の6万件だったが、うち88.3%にあたる5万3千件から同9.2%増の総額5,828億円の申告漏れ所得を見つけ、1,121億円を追徴。件数では全体の7.3%に過ぎないが、申告漏れ所得金額全体のほぼ6割を占めた。調査1件あたりの申告漏れは、前年度を14.1%上回る965万円と、全体の平均117万円を大きく上回る。
●  効率的・効果的な所得税調査の実施
  また、実地調査に含まれる着眼調査(資料情報や事業実態の解明を通じて行う短期間の調査)は、調査件数全体の21.2%の17万5千件行われ、うち81.7%の14万3千件から3,371億円の申告漏れを見つけ、159億円を追徴した。1件あたり平均申告漏れは192万円だった。
  一方、簡易な接触は、59万1千件行われ、うち67.0%の39万6千件から436億円の申告漏れを見つけ42億円を追徴。1件あたりの平均申告漏れは7万円だった。
  このように、実地調査では、全体の約3割の調査件数で申告漏れ全体の9割強を把握しており、高額・悪質な事案を優先して深度ある調査を的確に実施する一方、短期間で申告漏れ所得等の把握を行う効率的・効果的な所得税調査が実施されている。
  なお、業種別1件あたりの申告漏れ所得高額業種は、「貸金業」が2,957万円でトップ、「病院」(2,830万円)、「風俗業」(2,100万円)までがワースト3。
●  海外取引・ネット取引調査は重点的調査対象
  ところで、近年の所得税調査の特徴は、海外取引やインターネット取引を行っている者に対する重点的な調査の実施がある。
  海外取引調査は、前年度比20%増の3,103件の調査を実施し、60%増の総額約703億円、34%増の1件平均2,267万円の申告漏れ所得を把握した。この金額は、実地調査(特別・一般調査)での1件平均965万円の2.3倍にのぼる。調査件数全体の18%程度が無申告だったことも判明している。
  インターネット取引調査では、前年度比34%増の3,122件を税務調査した結果、同19%増の1件平均1,440万円の申告漏れ額が把握された。この申告漏れ額は、同時期の実地調査における特別調査・一般調査での1件平均の1.5倍にあたる。また、全体の29%程度が無申告であり、ネット取引業者の申告面でのずさんさを浮き彫りにする結果となった。
  海外取引、インターネット取引調査はともに3年連続で増加しており、調査結果においても多額の申告漏れが把握されていることから、今後も重点的な調査対象とされることは間違いない。
参考資料:「平成19事務年度における所得税及び消費税調査等の状況」(国税庁)↓
(浅野宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2008.10.27
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