>  今週のトピックス >  No.1739
企業の退職給付制度の実施状況
●  大企業では複数の退職給付制度を持つ
  厚生労働省が毎年行っている就労条件総合調査の2008年の結果概況が発表された。この調査は毎年調査項目が変わり、今年は退職給付制度について調査されているので、その概要を報告する。
  まず退職給付制度(退職一時金、企業年金)がある企業は全体の83.9%と、大部分の企業では何らかの退職給付制度がある。退職給付制度がある企業のうち、退職一時金制度のみの企業の割合は55.3%、企業年金のみの企業は12.8%、一時金と企業年金の併用は31.9%となっている。併用企業の割合は企業規模によって大きく異なり、100名未満の企業では27.1%であるが、1,000名以上の企業では56.7%となっている。企業規模が大きくなるほど複数の退職給付制度を持つ企業が多くなっている。
●  中小企業では中退共を活用
  退職一時金制度を持つ企業は年金との併用企業も合計すれば87.2%となるが、その原資の準備手段を尋ねている。中退共を利用している企業が39.0%と多い。100名未満の企業に限れば46.3%が利用している。中退共と社内準備の併用でまかなっているのである。300名以上の企業では中退共を利用できないので社内準備でまかなっている。
  企業年金制度がある企業に、具体的な制度名を尋ねると(複数回答)、厚生年金基金が35.9%、確定給付企業年金が11.7%、確定拠出年金が15.9%、そして適格退職年金が49.5%となっている。厚生年金基金は大企業ではすでに代行返上がすすみ、確定給付企業年金などに切り替わっているが、中小企業では総合型に加入している割合が依然高いことが分かる(100名未満の企業では厚生年金基金に41.1%が加入している)。厚生年金基金は、かつては大企業のための企業年金制度といわれていたが、今では中小企業のための制度となっている。
●  いまだに残る適格退職年金
  問題となるのが49.5%の企業がいまだに適格退職年金を採用していることである。適格退職年金は2012年3月をもって終了しなければならず、残り期間は3年5カ月と迫っているのにもかかわらずである。企業年金連合会の資料によれば2008年3月時点で32,826件の適格退職年金が残っているという。
  適格退職年金を採用している企業に対して今後の他の制度への移行計画を尋ねると、「今後見直しをする」との回答は24.0%にとどまっている。その内訳は中退共への移行が6.6%、確定拠出年金への移行が7.5%、確定給付企業年金への移行が10.2%である。それ以外の76.0%の企業はなんら対策を打てないでいることがわかる。
出所:厚生労働省「平成20年 就労条件総合調査結果の概況」
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2008.11.10
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