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法人の申告所得金額は5年ぶりの減少〜「2007事務年度における法人税課税事績」(国税庁)
●  申告所得減少は特殊要因だが、景気後退を裏付ける
  国税庁がこのほど発表した2007事務年度の法人税課税事績によると、本年6月末現在の法人数は過去最高だった前年度に比べ2,000法人(0.1%)減の300万3,000法人だったが、うち今年6月までの1年間に申告したのは過去最高となる279万9,000法人(前年度比0.4%増)だった。しかし、申告所得金額は55兆2,871億円、申告税額の総額は13兆7,036億円で、前年度に比べ、それぞれ3.1%減、5.2%減とともに減少した。
  申告所得金額、申告税額ともに5年ぶりの減少となるが、これは、連結納税に移行した法人(12法人、申告所得1兆7,128億円)の申告期限が2008事務年度にずれる制度的な特殊要因によるもの。新たに連結納税を採用しその申告期限の延長の特例を受けた2008年3月決算法人の申告期限は、翌事務年度の集計対象となる。これを加味した実質的な申告所得金額でも前年度に比べ0.1%の微減となり、前年度に過去最高となった法人の申告所得は、国内景気が後退局面となったことを税務面からも裏付けた結果となっている。
●  法人の黒字申告割合は32.3%で5年ぶりに低下
  この結果、法人の黒字申告割合は前年度に比べ0.1ポイント減の32.3%と、5年ぶりに低下した。法人の黒字申告割合は30%台の低い数字が15年も続いており、過去最高だった1973年度(65.4%)の半分にも満たない。
  前年度に16年ぶりに過去最高の数字を更新した黒字法人の申告所得金額も5年ぶりに減少に転じ、黒字申告1件あたりでは6,060万円で前年度に比べ3.1%の減少となった。前年度に30%近く減少した申告欠損金額も、2007年度は16兆1,878億円で、前年度に比べ3,071億円(1.9%)減にとどまった。
  申告欠損金額はピークの2002年度(33兆116億円)以降5年連続で減少しているが、資本金1億円以上の大法人に限れば申告欠損金額は前年度に比べ8,874億円減少している。つまり、申告欠損金額の減少はほとんどが大企業にかかるもので、多くの中小企業は厳しい状況が続いていることになる。
●  法人税調査で1兆6,259億円の申告漏れ把握
  一方、2007事務年度における法人税調査は、調査必要度の高い14万7,000法人(前年度比0.1%増)を実地調査した結果、うち74.1%にあたる10万9,000件(同0.3%増)から前年度に比べ5.7%減の総額1兆6,259億円の申告漏れを見つけた。加算税額587億円を含む3,916億円(同11.0%減)を追徴。1件あたりの申告漏れは1,107万円となる。
  また、調査した21.7%にあたる3万2,000件(前年度比0.5%増)が故意に所得を仮装・隠ぺいするなどの不正を行っており、その不正脱漏所得は4,268億円(同1.8%減)だった。1件あたりの不正脱漏所得は1,337万円(同2.3%減)と減少した。過去最高だった2002年度の1,591万円から5年連続で減少しているが、不正申告1件あたりの不正脱漏所得は依然として高額で推移している。
●  不正発見割合では「バー・クラブ」が6年連続のワースト1位
  不正を業種別(調査件数350件以上)にみると、不正発見割合の高い10業種では、「バー・クラブ」が58.1%で6年連続のワースト1位となった。「バー・クラブ」は2000年度まで14年連続1位という不名誉な記録を続けていたワースト業種の常連(唯一2001年度がワースト2位)。次いでこれも常連の「パチンコ」(50.1%)が続き、この2業種は5年連続でワースト1、2位となっている。3位は「再生資源卸売」(37.5%)。
  一方、1件あたりの不正脱漏所得金額が大きい10業種では、ともに前年ランク外の「建売、土地売買」(5,292万円)、「民生用電気機械器具電球製造」(5,013万円)が1、2位で、以下、「自動車・同付属品製造」(3,888万円)、「パチンコ」(2,808万円)、「非鉄金属卸売」(2,623万円)までがワースト上位5。不正発見割合でワースト1位の「バー・クラブ」は高額10業種に入っておらず、1件あたりの不正脱漏所得金額は1,749万円と相対的に少ない。
(浅野宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2008.11.10
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