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非正社員雇用の現状
●  非正社員の割合は一段と増加
  厚生労働省はこのほど多様化しつつある就業形態、特に非正社員の雇用の現状について調査し、その結果を報告した。この調査は平成15年にも行われており4年ぶりである。
 まず非正社員を雇用している事業所は全体の77.2%であり、前回調査の75.3%より2ポイント高まっている。業種別では、飲食店・宿泊業および教育・学習支援業では90%を超えており特に高い。
 非正社員の内訳をみると、パートタイムが最も多く59.0%(前回調査では57.7%)の事業所で雇用されている。以下、嘱託社員が12.9%(同11.3%)、派遣労働者が11.6%(同7.6%)の順となっている。いずれも前回調査より増加している。
 次に社員全体に占める非正社員の割合については、社員全体の62.2%が正社員、37.8%が非正社員となっており、4割近くが非正社員である。前回調査ではそれぞれ65.4%、34.6%であり、非正社員の割合は一段と高まっていることがわかる。非正社員37.8%の内訳はパートタイムが22.5%、派遣が4.7%、契約社員が2.8%、嘱託が1.8%である。派遣は前回調査では2.0%であり、2倍以上に増加している。
●  今後もパートタイムは増加
  業種別に非正社員の内訳をみると、パートタイムが多い業種は飲食店・宿泊業で55.6%、卸売・小売業で36.9%、教育・学習支援で25.3%となっている。派遣は情報通信業で9.9%、製造業で9.8%、金融・保険業で9.5%となっている。製造業の派遣は軽作業派遣であろう。契約社員は教育・学習支援業で9.6%であり、業種別に必要とされる非正社員が異なっていることがわかる。
 「今後増える非正社員の雇用形態」を尋ねた問(複数回答)への回答は、パートタイムが69.7%、嘱託が21.2%、派遣が19.5%、契約社員が18.7%となっている。嘱託は雇用延長であろう。
●  雇用形態によって異なる企業ニーズ
  このように非正社員を採用・活用する理由としては、「賃金の節約」40.8%、「仕事の繁閑に対応」31.8%、「即戦力の確保」25.9%、「専門的業務への対応」24.3%などとなっている。
 この理由は雇用形態によって異なっている。パートタイムでは「賃金の節約」が41.1%ともっとも多く、「仕事の繁閑に対応」が37.2%と、この2つに理由が集中している。一方、派遣は「即戦力の確保」が35.2%、「正社員が確保できないため」が26.0%、「景気変動で調整」25.7%となっている。契約社員は「専門的業務への対応」が43.6%、「即戦力の確保」が38.3%となっている。パートタイムには低賃金と雇用調整弁が期待されており、契約社員には専門性が求められている。派遣はその中間といえる。
 このように正社員にない役割を期待される非正社員であるが、雇用する側にとっても問題点としては「良質な人材の確保」が51.4%、「仕事に対する責任感」が48.3%、「仕事に対する意欲」が37.5%、「定着性」が35.4%と多く、メリットばかりではないようだ。
出所:厚生労働省「平成19年 就業形態の多様化に関する総合実態調査結果の概況」
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2008.11.17
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