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日米欧を覆うデフレ懸念、世界景気は後退モード
●  日米欧の成長率そろってマイナスへ
  米連邦準備理事会(FRB)のグリーンスパン前議長が「百年に一度の津波」と表現する金融危機が、世界の実体経済に大きな悪影響を与えることが明確になってきた。国際通貨基金(IMF)は2009年に戦後初めて日米欧の成長率がそろってマイナスになるとの見通しを発表。各国の中央銀行が一斉に金利を引き下げるなど対応に迫られている。いくら金融を緩和しても需要不足で物価が低下すれば、実質金利の高止まりが経済規模を縮小させる。日本が苦しんだデフレに世界経済が直面することとなった。
 IMFが発表した最新の世界経済見通しでは、世界全体の実質経済成長率は2.2%まで落ち込む。3%を下回れば「世界景気は失速」といわれている。地域別のマイナス幅は米国が0.7%、ユーロ圏が0.5%、英国が1.3%、日本が0.2%。日米欧だけではなく、新興国などを含め世界同時不況に陥る可能性が高まっている。
●  借金返済に追われ経済回らず
  こうした厳しい経済予測の根底にあるのが世界的な個人消費の減退だ。米国の場合、家計が抱える借金の可処分所得に対する比率は、サブプライムローン問題が本格化する前に80%だったものが、今は120%に膨らんでいる。借金を返すには支出を削るしかない。信用収縮と実体経済悪化の「負の共振」がさらなる景気悪化をもたらそうとしているのだ。
 こうした状況では、麻生政権が実施しているような景気対策に加えて、債務者の負担を軽くするために金融緩和政策が必要となる。米FRBが10月下旬に政策金利を0.5%引き下げたのに続き、日銀も同月末に0.2%引き下げを決定。11月に入って欧州中央銀行(ECB)が0.5%、イングランド銀行が1.5%引き下げている。
●  金融政策に限界
  ただし金融政策には限界もある。日本の政策金利は0.3%まで低下し、米国も1%まで下がった。政策金利は0%以下には下げられないが、景気後退で物価が下がって、実質金利が高止まりすれば、実質的な債務負担が増す。債務負担を減らすために借金返済を優先する個人や企業が増え、住宅投資や設備投資が縮小。景気後退がずるずると続く。日本がバブル崩壊後に経験した「デフレスパイラル」だ。
 金融危機の峠は今年の10月で越えたかもしれないが、その後には住宅バブルや信用バブルに浮かれた個人や企業の借金返済が待っている。今回は世界規模で借金返済の規模が大きく、信用収縮と景気悪化の負のスパイラルは当分続きそうだ。
2008.11.17
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