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会計検査院、税金の徴収漏れ約6億7千万円を指摘
●  全体の指摘件数は昨年度の2倍強、指摘額は4倍
  会計検査院が公表した2007年度決算検査報告によると、各省庁や政府関係機関などの税金のムダ遣いや不正支出、経理処理の不適切などを指摘したのは981件、1,253億6,011万円に達した。前年度に比べ、指摘件数(昨年度451件)は2倍強、指摘額(同310億6,420万円)では4倍にのぼり、件数・金額ともに、報告書の掲載基準が現行と同じになった1978年度以降では過去最高となった。
  財務省に対しては、税金の徴収額の過不足6億7,782万円が指摘された。指摘されたのは118税務署で、納税者252人から税金を徴収するにあたり、徴収額が不足していたものが246事項6億7,105万円、徴収額が多すぎたものが6事項677万円だった。前年度は、137署において徴収不足が244事項、8億518万円、徴収過大が8事項、1,613万円だったので、徴収不足は1億3千万円ほど減少したことになる。
●  職員の不正行為により3億円を不正支出く
  徴収が過不足だった252事項を税目別にみると、「法人税」が125事項(うち徴収過大1事項)で最も多く、以下、「申告所得税」90事項(同1事項)、「消費税」19事項(同1事項)、「相続・贈与税」11事項(同3事項)、「源泉所得税」7事項となっている。これらの徴収不足額や徴収過大額があった252事項については、会計検査院の指摘後、すべて徴収決定または支払決定の措置がとられている。
  そのほか、会計検査院の報告では、国税職員の不正行為による不当金額(支出)4件、3億4,311万円がある。例えば、大阪国税局の左京・中京両税務署において、職員が、1999年8月から2007年4月までに、国税の各種事務を処理するシステムの端末機を不正に使用して、実在する法人に対する虚偽の還付金の支払決議書等を作成等した上で、郵便局でその法人の代表者を装い還付金計3億1,443万円の支払いを受けて着服していた。
●  措置法の不適切な適用で税金1億円余の徴収不足
  また、会計検査院は、徴収漏れのなかに中小企業の設備投資に適用される税軽減制度の不適切な適用が原因だったものがあることから、国税庁に対し、同制度の対象資産に該当しないことを明確にすることにより、特別償却または税額控除の適用が適正なものとなるよう改善させたことが明らかになった。
  中小企業者等が一定の資産を取得等した場合の特別償却・税額控除制度の適用対象資産の一つ「機械及び装置並び器具及び備品」は、「機械及び装置」と「器具及び備品」に区分され、「器具及び備品」のうち、適用対象資産となるものは、事務処理の効率化等に資するものに限定され、租税特別措置法施行規則において、電子計算機及びインターネットに接続されたデジタル複合機と規定されている。
  ところが、会計検査院が納税者38人について検査したところ、医療機器は特別償却・税額控除制度の適用対象資産に該当しないのに、申告書に添付された明細書の名称欄に医療機器と思われる資産の名称を記載して税の軽減を受けていたり、医療機器を適用対象となる事務処理の効率化等に資する電子計算機等に該当するとして「器具及び備品」と記載していたり、明細書の記載内容が不適切だったものが見受けられた。
  さらに、納税者が申告書を提出した際、税務署等において、医療機器が適用対象とならないことについて理解や認識が不足していたり、明細書に記載された適用対象資産についての審査が不十分だったりして、誤ったままにしていたことが判明した。この結果、誤って税の軽減が行われて、合計1億460万円が徴収不足となっていたとして、会計検査院が国税庁に対して改善の必要性を指摘した。
(浅野宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2008.11.25
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