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上向く障害者雇用の状況
●   法定雇用率は上昇
  厚生労働省が定める障害者雇用促進法では、56名以上の企業に対して障害者雇用について法定雇用率1.8%を義務付けている。2005年に同法が改正強化されたこともあり、2008年6月時点で民間企業に雇用されている障害者(身体障害者、知的障害者、精神障害者)は、32.5万人(前年同期30.2万人)となり、前年比2.3万人増である。
  このように障害者の雇用状況は上向きつつあるものの、企業側の受け入れの状況はいまだ改善の余地がある。
  まず法定雇用率の分母となる民間企業の労働者数は2,049.9万人であるから、障害者の雇用率は1.59%にとどまる。前年は1.55%であり上昇はしているものの、全体でみると法定雇用率には達しない。なお個別企業で見ると、44.9%(前年は43.8%)の企業が法定雇用率を達成している。逆に言えば55.1%の企業が法定雇用率未達ということである。さらに障害者を一人も雇用していない企業は、法定雇用率未達企業の62.9%(前年63.4%)と過半を占めている。つまり企業によって、障害者雇用への取り組みに温度差が見られるということである。
●  企業規模により異なる雇用率
  企業規模別では、1,000名以上の企業では雇用率は1.78%と高く、ほぼ法定雇用率の水準である。500名以上では1.59%、300名以上では1.54%、100名以上では1.33%と、規模が小さくなるにつれて雇用率が逓減していく。
  大企業では特例子会社の設置によって法定雇用率の達成を目指す事例も多い。特例子会社とは、本来、親会社が法定雇用率の達成を義務付けられているが、一定の要件を満たす子会社であれば、子会社での障害者雇用者数を親会社の雇用者数にカウントできる制度である。
  6月時点で242社あり、そこで雇用されている障害者は1.1万人となっている。前年は219社、1.0万人であり、社数、雇用者数とも増加している。
●  厚生労働省による指導
  こういった状況を踏まえ、厚生労働省は指導を強化してきた。指導の手順は、まず企業から雇用状況の報告を受けて、状況のよくない企業に対してハローワークが3年間の雇い入れ計画の作成命令を出す。計画期間が始まって1年経過しても状況が改善しない場合は、適正な実施の勧告を行う。計画期間の3年が経過しても状況が改善しない場合は、さらに特別指導を行う。それでも実施しない企業は実名を公表してきた。実際に2007年度は3社の企業名を公表した。
  ここ数年続いた人手不足を追い風に障害者雇用の状況は上向いてきたが、最近の景気減速のなかであっても、状況が引き続き改善することが期待される。
出所:厚生労働省「平成20年6月1日現在の障害者の雇用状況について」
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、CFP®、米国税理士、DCプランナー)
2008.12.01
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