>  今週のトピックス >  No.1754
リース取引で賃貸借処理した場合の消費税の取扱い
●  例外的に賃貸借処理も認められた移転外リース取引
  日本税理士会連合会はこのほど、所有権移転外ファイナンス・リース取引において賃借人が賃貸借処理した場合の消費税の取扱いについてのQ&Aをホームページ上に公開した。周知のように、移転外リース取引は、今年4月1日以後のリース契約締結分から、資産の売買があったものとして、賃借人における消費税の課税仕入れ等の税額控除の時期はリース資産の引渡しを受けた日の属する課税期間に一括控除することとされた。
  しかし、「リース取引に関する会計基準」等では、少額または短期の移転外リース取引として重要性が乏しい場合には例外的に賃貸借処理が認められ、「中小企業の会計指針」においては、すべての移転外リース取引について賃貸借処理を行うこともできるとされている。また、法人税法においては、売買でありながら賃借人が賃貸借処理することをベースとして償却の方法が認められ、事実上改正前の取扱いが維持されている状況にある。
●  賃貸借処理している場合は分割控除もOK
  こうしたことから日税連は、実務上の混乱を防止する観点から、賃借人が賃貸処理している場合には、そのリース料について支払うべき日の属する課税期間の課税仕入とする処理(分割控除)も認めるよう税制建議してきたが、このほど国税庁より、「分割控除で消費税の申告をしているときは、それによって差し支えない」旨の見解が示された。そこで、その取扱いについて、国税庁の指導も得ながらQ&Aを作成したものだ。
●  リース資産ごとに一括控除と分割控除を併用可能
  Q&Aでは、例えば、リース資産ごとに一括控除と分割控除を併用することの可否を質問している。
  大規模な機械装置であるA資産と少額なB資産を移転外リース取引により賃借している場合で、賃借人は「会計基準」に従い、A資産は売買処理していることから、消費税の仕入税額控除に当たってはその引渡しを受けた日の属する課税期間において一括して控除することとしている。一方、B資産については、複数契約をしている上、少額であることから賃貸借処理し、消費税の仕入税額控除に当たっては分割控除することとしている。このように、会計基準に従って、賃借人が移転外リース取引について異なる経理処理を行った場合には、一括控除と分割控除が併用されることとなるが、このような処理は認められるかという疑問である。
  この質問に対して、答は認められるとしている。
  移転外リース取引に係る賃借人の仕入税額控除については、一括控除するのが原則だが、少額または短期のリース資産であるか否かによって、賃借人における経理処理が異なることも予想されるところ、このような会計基準に基づいた経理処理を踏まえ、事業者の経理実務の簡便性という観点から、賃貸借処理した移転外リース取引に係る資産については分割控除することを認めることが相当とされているものである。
  したがって、事例のように売買処理したリース資産については一括控除し、賃貸借処理したリース資産については分割控除するといった処理を行ってもこの処理は認められるとしている。
  そのほかQ&Aは、(1)賃貸借処理している場合の仕入税額控除の時期、(2)仕入税額控除の時期を変更することの可否、(3)賃貸借処理に基づいて仕入税額控除した場合の更正の請求の可否、(4)簡易課税から原則課税に移行した場合等の取扱いなど計5問について、その回答を掲載している。実務家としては、一度は目を通しておきたいところだ。
(浅野宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2008.12.01
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