>  今週のトピックス >  No.1757
約4人に1人が「今後1年間で失業する不安」を感じる
●  失業する不安感を持つ労働者の急増
  連合総合生活開発研究所が発表した「勤労者の仕事と暮らしについてのアンケート調査(2008年10月実施)」結果によると、「今後1年くらいの間に失業する不安を感じている」と答えた割合が前回(2008年4月)調査の18.2%より増加し、23.8%に上った。半年間で5.6ポイントの上昇は、2001年4月に調査を開始して以来、過去最大である。この調査は、毎年4月と10月に定期的に実施しており、今回で16回目となった。
  アメリカ発の金融恐慌が世界中に波及し、世界規模の経済不況となっている中、働く人の生活にも暗い影を落としている。アンケートでも現在の日本の景気は1年前と比べて悪くなったとする者の割合は8割に上り、また日本の景気が1年後に現在と比べて悪くなると予測する者も半数以上に上っており、こうした認識が、失業の不安を感じる要因となっているようだ。
●  景気後退や失業不安が労働環境に及ぼす影響は大きい
  景気後退や失業の不安は、労働環境にも大きな影響を及ぼしている。今回の調査によると、平均的な1週間あたりの実労働時間(残業含む)は「50時間以上60時間未満」が14.9%、「60時間以上」が10.4%となっており、4人に1人が週50時間以上働いている状況である。実労働時間が長くなっているのは時間外労働・休日労働が原因であるが、時間外労働・休日労働をしなければならない理由を尋ねたところ、もっとも多かったのは「仕事量が多いから」(54.2%)で、以下「突発的な仕事があるから」(42.4%)、「仕事の繁閑の差が大きいから」(21.0%)であった。やはり、長時間労働の背後には、景気後退により企業が人員削減を行っていることによる職場の人手不足があるようだ。また、労働者も失業することを恐れ、嫌々ながらもクビにならないよう長時間労働を受忍しているところもあるのではないだろうか。特に、30代男性(54.3%)の「残業や休日出勤をしないと仕事が終わらない」割合が高く、次いで40代男性(48.6%)、50 代男性(43.2%)となっており、職場の人手不足を背景に働き盛りである30代以上の男性に残業・休日出勤せざるを得ない仕事量がのしかかっている現状である。
●  メンタルヘルス、ワークライフバランスによる労働環境の改善
  こうした状況は、労働者のストレス増大も引き起こしている。1年前と比較してみると、仕事や職場でのストレスが「かなり増えた」「やや増えた」と回答した割合の合計は53.0%と過半数に上る。また、「今後の仕事と生活時間の希望」に関する質問では、仕事時間の減少と余暇活動時間の増加を希望する割合が高く、特に長時間労働者においては「睡眠」の増加希望が高くなっており、生存のために必要な「睡眠時間」を削って長時間労働を行わざるを得ない状況がうかがえる。このようなストレス増大や睡眠時間の不足は、過労死やうつ病を引き起こす原因ともなり、労働者の心や身体の健康に悪影響を与える大きな問題である。さらに、30代〜50 代男性、長時間労働者は勤務時間以外でも「仕事に関するメール・電話の対応をしている」「職場への呼び出しがある」「職場から持ち帰った仕事をしている」割合が高く、仕事から完全にオフになっていない状況であり、ワークライフバランスの観点からも非常に問題があると言えよう。長引く経済不況と労働力人口の減少において、企業は、少数の優れた人材を雇用、教育し、その人材が健康を損なうことなく、やりがいを持って仕事を遂行してもらうためには、メンタルヘルスやワークライフバランスなどさまざまな取り組みをしていく必要があるようだ。
出所:財団法人 連合総合生活開発研究所
第16回「勤労者短観(勤労者の仕事と暮らしについてのアンケート)」
http://www.rengo-soken.or.jp/webpage/17.html
(庄司 英尚、株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2008.12.08
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